データをインターネット上のサーバに集中させ、ハードウエアリソースの無駄を省くという考え方は良いのですが、このやり方でネックとなるのが通信速度。クラウドコンピューティングでは、大きなファイルを開こうとすると、通信量が増え、時間も掛かってしまいます。高速な通信の維持が前提となってくる訳です。例え十分に高速なネットワークが用意されたとしても、結局はサーバのハードディスクを読み書きする事に変わりはありませんから、クラウドコンピューティングでローカルのハードディスクの速度を越えるのは、理論的に難しいのは明白でしょう。 通信量の少ない簡単な事務作業、例えばワードの文書ファイルを読み出す程度の軽作業であれば、クラウドコンピューティングは何の問題もありません。それどころか、クラウドへのアクセスアカウントを持っていれば、どのマシンからも同じ様な環境で作業出来るというメリットを オフィスでの作業を家に持ち帰る場合など、クラウドは威力を発揮します。データを一元的にサーバ上で管理出来るからです。以前はこうしたデータの移動の為にUSBメモリが使われる事が多かったのですが、USBメモリ自体を紛失した場合、重大な情報流出事故に繋がってしまうのがネックでした。情報流出という面では、会社のノートパソコンを自宅に持ち帰るのも結局は同じ事です。USBメモリもパソコン本体も、どこかに置き忘れてしまえば情報漏洩に直結してしまいますからね。 一般的にあまり利用されていないようですけれども、Windows10で実装されている非常に便利な機能が、BitLockerです。ハードディスクやUSBメモリなどのストレージデバイスを暗号化するソリューションで、Windows10 Professional Edition で標準実装されている機能ですので、無料で利用出来ます。USBメモリの内容を暗号化格納し、パスワードが合わなければ中身を見る事が出来ないという単純な機能ですが、こうした暗号化を施す事で、デバイス紛失時の情報漏洩を防止する事が可能になります。 記憶容量128ギガバイトで100MBps以上の高速書き込み可能なUSBメモリが、今では3,000円ほどで手に入りますので、スタンダードプランで5ギガバイト程度のチープなクラウド契約では全く手に負えないような大容量のデータ移動が、安全に安価に実行出来るという訳です。 以前、指紋認証付きのUSBメモリが出回った時代がありましたけれども、Windows10の標準機能で同様の機能が無料で手に入れる事が可能になったのは、我々ユーザにとっては朗報でしょう。ハードウエアメーカにとっては災難でしょうが。 クラウドは通信スピードの面でまだまだ完全とは云えません。BitLockerで暗号化したUSBメモリによるデータ移動を並行して用いる事で、安全性とスピードを両立させる事が、現時点での最良の方法と云えそうです。 また同時に、突然のハードディスククラッシュや、ランサムウエアによる攻撃に対しても、USBメモリに保存された定期バックアップは絶大な威力を発揮するでしょう。ランサムウエアとは、データを勝手に暗号化して、その復号キーが欲しければ金を払え、という形式のウィルス攻撃の総称です。特定の端末を踏み台にする事で、その端末からアクセス可能なファイルサーバは、芋づる式に全て攻撃の対象とされてしまう事を考えれば、必要な時だけ抜き差しして使うUSBメモリを用いてデータのバックアップを取る行為は、一見初歩的ではありますけれども、強烈なセキュリティと安全性を発揮するという訳であります。
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