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  新型コロナウィルスPCR検査の精度を考えてみた  

 徒然

 今、第三波到来によるGotoトラベルの一部停止等が話題に挙がっております。ほとんどの場合、各自治体における「陽性者」の人数を元にしているようですが、数学的見地からみると、事実とかけ離れている可能性の高い数字に一喜一憂し、振り回されているように思われます。私は医療関係者ではありませんので医学的な考察は出来ませんけれども、新型コロナウィルスPCR検査の精度を数学的(というより算数的)に考えてみようと思いたった次第です。

 あらゆるアナログ的な検査には誤差が含まれていますが、それを考えていく上で大切な数字が3つ存在します。有病率、感度、特異度です。

 有病率とは、人口に対する罹患者の割合です。この数値は厳密には推測でしか語れないのですが、日本の人口をざっくり一億人とした場合、今の瞬間、新型コロナウィルスが発症していたり無症状だが保菌したりしている人が10万人居るとすると、有病率は0.1%になります。

 感度とは、本当に陽性の人のうち、陽性であるという結果を得る事が出来る人の割合です。例えば感度90%であった場合、100人の罹患者の内、PCR検査で陽性反応が出る人が90人で、残りの10人は本当は陽性なのに陰性の結果となる(偽陰性)事を意味します。

 特異度とは、本当に陰性の人のうち、陰性であるという結果を得る事が出来る人の割合です。例えば特異度80%であった場合、100人の真の陰性者の内、PCR検査で陰性反応が出る人が80人で、残りの20人は本当は陰性なのに陽性の結果となる(偽陽性)事を意味します。

 とりあえず、計算の練習として、有病率0.1%、感度90%、特異度80%として、症状がないのに単に不安だからと云う理由でPCR検査を受けたところ「陽性」という結果が出た場合に、その人が本当に罹患している確率を考えてみましょう。単純に感度が90%ですから、90%の確率で罹患しているように直感的には考えがちですけれども、今回はそこをきちんと計算してみる事にします

 設定に従って、症状がないのに単に不安だからと云う理由でPCR検査を受けた人が10,000人居たと仮定します。有病率が0.1%ですからこのうち罹患者は10,000人の0.1%で10人存在する事になります。更に感度が90%ですので罹患者10人のうち9人に陽性反応が、1名には陰性反応(偽陰性)が出る事になります。対して特異度80%ですので、9,990人の非感染者の内の80%、すなわち7,992人には陰性反応が出る反面、1,998人に陽性反応(偽陽性)が出てしまいます。全体として陽性反応が出た人の人数は9+1,998=2,007人。その内の9名が真の陽性者な訳ですから、「陽性」という結果が出た場合にその人が本当に罹患している確率(陽性的中率)は9÷2,007=0.0045=0.45%。感度90%の検査にも関わらず、この設定では、なんと0.45%の確率でしか「真の陽性者」を検出出来ないのです。陽性判定された方の実に99.55%が偽陽性という結果となります。

 一般的に感度と特異度はトレードオフ(二律背反)の関係にあります。感度を上げて陽性者を多く拾おうとすると、偽陽性の割合も増え、結果として特異度は下がってしまうのです。これはあらゆるアナログ的検査の宿命でもあります。結局のところ、陽性的中率を向上させるには、有病率を上げるしか方法がありません。むやみやたらにPCR検査を行なうのではなく、発熱が4日以上継続している、息苦しさが続いている、味覚がおかしい等の症状のある方に限定してPCR検査を実施する事で、有病率を上げようという試みが重要になるのです。

 実際のコロナウィルスでは、感度75%、特異度99%との事ですので(コロナ制圧タスクフォースより)有病率0.1%として、症状がないのに単に不安だからと云う理由でPCR検査を受けたところ「陽性」という結果が出た場合に、その人が本当に罹患している確率(陽性的中率)を計算してみます。

 母数を10,000人として、有病率が0.1%とするとこのうち罹患者は10,000人の0.1%で10人存在する事になります。更に感度が75%ですので罹患者10人のうち7.5人に陽性反応(真の陽性者)が、2.5名には陰性反応(偽陰性)が出る事になります。対して特異度99%ですので、9,990人の非感染者の内の99%、すなわち9,890人には陰性反応が出る反面、100人に陽性反応(偽陽性)が出てしまいます。全体として陽性反応が出た人の人数は7.5+100=107.5人。その内の7.5名が真の陽性者な訳ですから、「陽性」という結果が出た場合にその人が本当に罹患している確率(陽性的中率)は7.5÷107.5=0.0697=6.97%。陽性者の内、実に約93%もの人が偽陽性という事になるのです。

 仮に1,000万都民全員を対象にPCR検査したら、東京都だけで陽性者10万7,500人ですぜ。一発で医療崩壊、間違い無しじゃあ〜りませんか

 発熱が4日以上継続している、息苦しさが続いている、味覚がおかしい等の症状のある方や、明らかな罹患者への濃厚接触者、すなわち高確率で罹患が疑われる方に限定してPCR検査を実施するのは、有病率を向上させる行為です。例えば先ほどと同じ、感度75%、特異度99%だが、有病率50%の場合に、陽性的中率を計算してみましょう。いわゆる検査対象を絞り込んだ上でのPCR検査の場合です。

 母数を10,000人として、有病率が50%とするとこのうち罹患者は10,000人の50%で5,000人存在する事になります。更に感度が75%ですので罹患者5,000人のうち3,750人に陽性反応(真の陽性者)が、1,250名には陰性反応(偽陰性)が出る事になります。対して特異度99%ですので、5,000人の非感染者の内の99%、すなわち4950人には正しく陰性反応が出る反面、50人に陽性反応(偽陽性)が出てしまいます。全体として陽性反応が出た人の人数は3,750+50=3,800人。その内の3,750名が真の陽性者な訳ですから、「陽性」という結果が出た場合にその人が本当に罹患している確率(陽性的中率)は3,750÷3,800=0.9868=98.68%。全員にPCR検査を行なった際の陽性的中率がたったの6.97%であったのに対し適切な絞り込みを経て検査を行えば、的中率は98.68%まで向上するのです。

 全国民にPCR検査を、と声高に叫ぶ行為が如何に無意味なものか、いや実際感染もしていないのに「無症状の感染者」として扱われる偽陽性の方による医療リソースの圧迫の事を考えれば、全数PCR検査なんて害悪でしかない事を知るべきでありましょう。

 第一波、第二波の頃に比べてPCR検査の体制は拡充され、陰性証明を得る為だけに検査を受ける例も増えていると耳にします。第三波と呼ばれる現在の陽性者の増加が、本当に新型コロナウィルスの深刻な蔓延を意味しているのか、それともやみくもなPCR検査実施による有病率の低下に起因した偽陽性者の増加に過ぎないのか、専門家会議と呼ばれる偉い先生方には「検査対象者の変化」も含めてきちんと調べて分析して説明して頂きたいモノであります。ね、こういうのきちんと伝えるのが理系の本来の役目なんだからさ。ロックダウンに言及するなどご自分の専門外にクチバシをつっこむ前に、やるべき仕事をして下さいな。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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