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ずらりと並んだガシャポン |
様、ガシャポンをご存じでしょうか。一回数百円(機械によって値段が異なる)を投入してダイアルを回すとカプセルが出てくる自販機のようなマシン。私が幼少の頃は「ガチャガチャ」と呼ばれて駄菓子屋の店先に置かれていたものです。秋葉原などにガシャポンマシンがずら〜っと並んだエリアがあって、ちょっと前まで外国人観光客に大人気でありましたよ。コロナ禍で来日客が激減しておりますけれども、相変わらず一定のファンを掴んでいるようであります。
ガシャポンで扱うカプセルに入ったおもちゃ、いわゆるカプセルトイはマシンごとに中身が異なり、全部で4種類とか6種類とか入っているのが一般的。ガシャポンマシンに入っている全種類のカプセルトイをゲットする事を「コンプリート」と呼び、ファンの中にはコンプリートを目指して何度も何度も引く方がいらっしゃるみたいですけれども、ふと、コンプリートの為には平均何回引けば良いのかと気になって、期待値から平均試行回数を求めてみる事に致しました。
さて、数学的な基本の再確認をしてみましょう。今、さいころを振って「3」の目を出す事を考えてみます。さいころは6面存在しますので「3」の目が出る確率は1/6。期待値が1になる、つまり「3」の目を出すのに必要な平均試行回数は1を1/6で割った値、つまり6回という事になります。運の良い人は1回で「3」が出るかも知れませんし、運の悪い人は30回連続で外れるかも知れませんけれども、数学的に平均試行回数は、期待値が1=100%になる回数の事を指すのであります。
この理屈から類推すれば、2/3の確率で起こる事象が存在した場合、その逆数を取って3/2回=1.5回がその事象を発生させる為の平均的な試行回数という事になります。よろしいですね?
今回は6種類のカプセルトイが入っているガシャポンをコンプリートさせる事を考えてみましょう。1種類目のカプセルトイをゲット出来る確率は1。どれを引いても必ず1種類目をゲット出来る訳ですからね。確率1の逆数は1ですので、平均試行回数は1となります。
続いて2種類目のトイをゲット出来る確率を考えてみましょう。6種類のうち1種類は既にゲットしている訳ですので、まだ出ていない種類のトイは5種類残っています。対して全体としては6種類存在する訳で、つまり2種類目のトイをゲット出来る確率は5/6という事になります。実現の為の平均的試行回数は逆数を取って6/5という訳です。
更に 続いて3種類目のトイをゲット出来る確率を考えてみましょう。6種類のうち2種類は既にゲットしている訳ですので、まだ出ていない種類のトイは4種類残っています。対して全体としては6種類存在する訳で、つまり3種類目のトイをゲット出来る確率は4/6という事になります。実現の為の平均的試行回数は、その逆数を取って6/4という訳です。これを6種類目のトイをゲットするまで繰り返します。
上の式のように、6種類のトイ全てをゲットするのに必要な平均的な試行回数は14.7回と算出されます。たった6種類をコンプリートさせるのにこんなに掛かるのです。1回500円のワンコイン・ガシャポンの場合、最短なら6回の3,000円で済みますが、平均的には7,350円掛かる事になります。勿論、これは数学的に計算した「平均的な」試行回数ですので、運が悪ければ、もっともっとお金が掛かる事もあり得ます。ただしカプセルトイが十分な数量存在すれば、ワンユーザ当たりの売り上げは7,350円に限りなく近づく事になります。ユーザ側はやってみないと分からないのに対し、経営側は確実に売り上げが計算出来る。いやはやガシャポンって、経営側にとって中々美味しい商売である事が分かりますね。ちなみに、n種類のトイが入っているガシャポンのコンプリートまでの平均試行回数の一般式は、以下のようになりますぜ。
ふと思いついたのですが、コンプリートを狙う人が多い場合、敢えて一種類だけアイテムの数を半分にしたら、コンプリートしにくくなって、経営側はもっと儲かるのではないでしょうか。早速検証してみましょう。
6種類のうち一つだけ個数を他のモノの半分にしたとします。普通のトイ5種類を引く確率はそれぞれ2/11、特別なトイを引く確率が1/11という設定です。
まず最初に特別なトイを引いたと仮定して試行回数を計算してみましょう。特別なトイを引く確率は1/11ですから、平均的試行回数は11回になります。続いて別のトイを引く確率は10/11ですので、平均的試行回数は11/10回。更に続いて別のトイを引く確率は8/11ですので、平均的試行回数は11/8回。これを繰り返すと、全体の試行回数の以下のようになります。
続いて2回目に特別なトイを引いたと仮定して試行回数を計算してみましょう。最初に普通のトイを引く確率は10/11ですので、平均試行回数は11/10回。続いて特別なトイを引く確率は1/11ですので、平均試行回数は11回。更に続いて別のトイを引く確率は8/11ですので、平均的試行回数は11/8回。これを繰り返すと、全体の試行回数の以下のようになります。
繰り返しになりますので説明は割愛させて頂きますが、特別なトイを3回目に引いたと仮定すると全体の試行回数は以下のようになります。
特別なトイを何番目に引こうと全体の平均試行回数は変わらない事が分かりますね。平均試行回数は、特別なトイを1番目に引いた場合、2番目に引いた場合、3番目に引いた場合、・・・〜6番目に引いた場合の6種類の平均値となりますので、以下の式の通りになります。
平均的試行回数は、23.558333・・・回ですね。1回500円のワンコイン・ガシャポンの場合、運が良ければ最短6回の3,000円で済みますが、平均的には何と、約11,800円も掛かる事になります。勿論、これは数学的に計算した「平均的な」試行回数ですので、運が悪ければ、もっともっとお金が掛かる事を覚悟しなければなりません。
いやはや秋葉原のような都心の一等地にガシャポン専門店を開いて、これで元が取れるんかいなと思っておりましたが、なんのなんの、コンプリートを目指したくなる魅力的なトイさえ用意出来れば、ガシャポンは非常に収益率の高い美味しい商売である事が判明致しました〜。それにしても普通に売れば3,000円なのに平均売り上げ約11,800円って・・・。ガシャポン商売、恐ろしや!
【つづく】
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