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しげの秀一「バリバリ伝説」 |
談社の週間少年マガジンに1983年から9年間に渡り連載されていた、しげの秀一のマンガ作品「バリバリ伝説」は、高校生ライダーがレースの世界に入り、アマチュアから世界チャンピオンにまで登り詰めるサクセス・ストーリーです。
当時、世はオートバイブームの真っ只中でありました。連載開始時、私は高校3年生。作中人物達の年齢も私とほぼ同じで、共感出来る部分も多く、夢中になって読んだものであります。今のお若い方には分からないでしょうけれども、当時は、16歳になったら自動二輪の免許を取ってバイクに乗り、18歳になったら普通車の免許を取って車を運転したいと考える人が、今よりもずっと多かった時代。スマホもSNSも存在しませんでしたから、その代わりに多くの若者はオートバイや車に傾倒したのであります。
マンガですから一部には荒唐無稽な設定も存在するのですが、それらを割り引いたとしても、よく出来た作品であります。当時の自分の心情を思い出して作中人物に感情移入したりするのも、懐かしく楽しい行為。更に今となれば作中に登場する若者達は、自分の子供よりも下の世代でありまして、親の立場からストーリーを読み解くというのも、中々新鮮な経験でありました。
漱石作品は、小学生の時に読む、中学生の時に読む、高校生の時に読む、大学生になって下宿で読む、社会人になって独身寮で読む、結婚して読む、子供が出来て読む、子供が独立した後に読む、それら全ての行為に於いて、それぞれ別の新たな感慨を齎してくれます。バリバリ伝説は漱石ほどでは無いにしろ、読む立場や年代によって違う読み方が出来るという点では確かに共通項を持っていて、それだけ作品のクオリティが高いという事なのでしょう。
最近になって、かみさんが再びオートバイに目覚めた事もあって、バリバリ伝説 全38巻を一気に再読したのですが、二輪車に対する若い頃抱いていた感覚を久しぶりに思い出す事が出来ました。たまには古いマンガを再読するのも良いものでありますなぁ。
【つづく】
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