あれこれ memorandoms やすなべ categorized Yasの状況 activities Yasについて about Yas Yasへの連絡 contact us

  クールジャパンに奢りは無いか  

 徒然

 済産業省を中心にクールジャパン構想が進められていて、アニメーションなどの日本のポップカルチャーを積極的に海外に発信・販売していこうという動きを活発化しようしています。細かい話は色々あるでしょうけれども、基本的にこのムーブメントは「日本のアニメの品質は非常に高い。政府が後押しする事でこうした高品質なコンテンツを海外に向けて積極的に販売していこう」という考えに基づいているようです。しかし本当に日本製アニメーションは、世界基準に照らして高い品質を有していると言い切れるのでしょうか。

 私はアニメーション・ファンであります。50歳という年齢から考えれば、平均値を遙かに超えるアニメーション作品を観ていると自負しております。その上で敢えて云わせて頂くと、「ヱヴァンゲリヲン」、「攻殻機動隊」、「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」、「イヴの時間」、「(こと)()(にわ)」など、確かにクオリティの高い作品はたくさん存在しますが、こうした作品は、若年層や一部のコアなファンをターゲットとして設定されているものがほとんどで、万人受けする作りになっているとはお世辞にも云えないのであります。

 同様に、国内向けの閉じた傾向を感じる作品が多い事も気になる点です。表現を変えれば、「海外に輸出しようする意識に欠けている」とでも申せましょうか。日本の生活習慣や文化を知らなければ作品の内容が理解出来ないのでは、輸出向け商品としてははなはだ弱いのは明白でしょう。日本人が国内で観ている分には十分に面白いのですがね。

 先日、ディズニー(旧ピクサー)の「ズートピア」を劇場で観て参りました。日本の場合、アニメーションというだけで「子供向け」という印象を抱いてしまう方が多いようで、日本語吹き替え版は子供連れで溢れておりましたので、敢えて英語版を選択しました。結論から申し上げますと、「ズートピア」は、大人向けの作品である事がハッキリと分かります。人種差別的な要素や、それを受け入れざるを得ない社会の現実と庶民の悲哀、職場におけるパワーハラスメントぎりぎりの強烈な上司の存在、ポリティカル・ゲームと称するしかない政治家たちの腹黒い行動など、非常に深い部分で考えさせられる事が多い映画です。きっと、多くの子供はこの作品のごくごく表面的な部分しか理解出来ないでしょう。しかしそれでも絵的には動物たちはモフモフ感が満載で可愛く、子供でも十分楽しめるようになっています。楽しみ方の深度に違いはあれど、まさに老若男女万人が楽しめる構成の映画作品あると断言出来ます。更に、初期の設定段階から、多言語によるデストリビュートが前提とされている事も明白。最初からワールドワイドなマーケットを相手に設計された作品なのです。

 クールジャパンという表現からは、「日本のアニメはクオリティが高いのだ」という奢りが感じられなくもありません。どの国にもオタクは存在しますから一定数の需要はあるでしょうけれども、世界中の老若男女をターゲットとして企画制作されているディズニー作品(旧ピクサー作品)と比較した時、コンテンツの商品価値という意味では、日本製アニメはまだまだ全然かなわないでしょう。経済産業省のお役人は、まずは古今東西様々なアニメーション作品に目を通し、日本製アニメ作品の現状をもっともっと勉強するべきだと思います。補助金を投入する以上、それは当然のプロセスでしょう。何度も申し上げますが、私は熱烈な日本製アニメファンで、ヱヴァンゲリヲンも大好きであります。しかしヱヴァンゲリヲンが万人受けするとは、絶対に思わない。そもそも経済産業大臣の林幹雄(もとお)氏は、ヱヴァンゲリヲンを観た事があるのかしらん。日本製アニメーションを、単なる嗜好の問題ではなく政策の一環として語るには、はなはだ勉強不足と云わざるを得ないのでありました。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

「あれこれ」の目次に戻る

Copyright(C) by Yas/YasZone