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  コピーガードについて考えてみた  

 徒然

 作権法は、その基本的精神として、著作権者の権利を守る事を主たる目的としていますから、海賊版の頒布(はんぷ)を防止する事に重きを置いている反面、利用者の利便性を守る為に、個人的な利用を目的とした複製を認めています。しかし2012年10月から「技術的な保護手段が施されたコンテンツを権利者の意図しない手段で複製する行為は、個人的な利用の範囲外とする」という内容が追加され、市販のDVDやブルーレイディスクのコピーが、事実上禁止となったのであります。例えばDVDには、CSSをはじめとするコピーガードが施されていますから、これを解除する行為は違法にあたるという訳です。

 対して音楽CDのほとんどはノンプロテクトですので、PC経由でiPodなどの携帯音楽プレーヤに楽曲をコピーしても、個人的な使用の範囲内であれば違法性を問われる事はありません。かつてCCCD方式のプロテクト付きの音楽CDも流通していました。しかし既に過去のモノであり、現在では、音楽CDは事実上自由にコピーが出来る状態にあります。

 音楽CDをコピーしても適法なのに対し、DVDやブルーレイのコピーが許されないのは何故でしょう。CDが世に出た頃にはデジタルコピープロテクトという概念自身が無かったという事もあるでしょう。しかしCCCD方式プロテクトが現出したにも関わらず、その後、程なくして衰退した事を(かんが)みれば、プロテクトを掛ける事で海賊版を防止するメリットよりも、携帯音楽プレーヤに楽曲をインストール出来ないとCDを買って貰えない、又はレンタルして貰えないというデメリットの方が大きいという、レーベル側の経営的判断があったからだと思われます。

 DVDもブルーレイも、リリース当初は莫大な記憶容量を誇るメディアでありました。しかし、HD画質の2時間モノの映画程度ならば、今や楽々ダウンロード出来るデータ量に過ぎませんし、ハードディスクレコーダに普通に格納可能です。こうした、ハードウエアや通信環境の技術革新を考えれば、DVDやブルーレイから映像を取り込んでおいて、好きな時に再生して楽しむという使い方 〜あたかもiPodに音楽をコピーして利用しているように〜 が当たり前になっても何ら不思議ではありません。グーグル・グラスに代表されるウエアラブルディスプレイ(メガネ型のディスプレイ)の現出は、そうした未来を示唆していると云えそうです。ヘッドフォンを掛けている人々は街に溢れています。しかし誰一人としてCDプレーヤで音楽を聴いている人はいないでしょう。誰もがCDからリッピングされたデータを携帯プレーヤやスマートフォンに格納して、それを聴いている筈です。DVDやブルーレイに格納された映像も同様の方式で街に持ち出され、例えば通勤電車の中で視聴するという形態が普通になるという予想は、自然な推測であると申せましょう。

 つまりは、DVDやブルーレイも音楽CDと同様にノンプロテクト化し、ユーザの利便性を上げる事で販売数の増加、又はレンタル数の増加を狙うべき時代が、すぐそこまで来ていると思うのです。

 にもかかわらず、CSS以外にもDisney X-Project DRM等の新しい強力なプロテクト方式が新たにドンドン導入されている現状は、実は短期的な対症療法に過ぎないにも関わらず大量の治療費を投入しているのとあまり変わりないように思えます。レーベルは多大な費用を支払って、システム業者にプロテクトを掛けて貰う訳ですからね。

 現状ではDVDを購入するのはコアなマニアに限定されていて、ほとんどのユーザはレンタルで済ましているとすれば、観る分しか借りない今の方式よりも、今すぐには観ない分もレンタルして、いつでも観れるようにデータをストックしておく方式の方が、売り上げの増大は明らかであろうと思うのです。その為には、コピープロテクトは、正常な売り上げや流通を阻害する要因以外の何者でもないでしょう。

 勿論、これらの議論は、個人的な利用の範囲内でという前提での話であります。海賊版の頒布(はんぷ)や違法販売は厳格に取り締まらねばなりません。しかしこうした悪意を持った販売目的のコピーを行なう(やから)は、どんなプロテクトを掛けても、あらゆる手を用いて結果として解除してしまうでしょう。悪人には解かれてしまうくせに、善人の利便性が犠牲になっているとすれば、プロテクトを施すこと自体が無意味であるとも云えます。

 一般的に堅いと云われるDisney X-Project DRM方式プロテクトですが、我々のような職業的にセキュリティや暗号を扱った経験を持つ者にとっては、大した労力も無く開ける事の出来る、ちょっとした鍵に過ぎません。ましてや基本的なCSSプロテクトなど、はたしてこれをコピープロテクションと呼んで良いのかという程の脆弱さ。鍵としては非常に陳腐な仕掛けであります。

 技術的な要件以前に、個人的な利用の為のコピーは元々許されていた筈です。取り締まるべきは海賊版の頒布や違法販売であって、個人利用の為のコピーではない筈。著作権法の精神を鑑みますと、2012年10月の著作権法の改訂には、何やらチグハグである印象を持たざるを得ないのでありました。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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