成の誤謬という言葉をご存じでしょうか。会社が痛んだバランスシートを改善する為に設備投資よりも借金返済を優先したとします。勿論、経営という視点では正しい方策であります。しかし社会全体の設備投資が縮小されるという点では景気は悪化に向いてしまうでしょう。結果として各社のバランスシートは改善しない事になってしまいます。ミクロ的には正しい行為だとしても、マクロ(集計量)の世界では必ずしも意図しない結果が生じる事を指す経済用語、それが「合成の誤謬」であります。
wiggleという有名なサイトが御座います。アドレスは、http://wiggle.co.uk 。有名なイギリスの自転車ショッピングサイトであります。イギリスのサイトでありながら表示は日本語。一定以上の買い物をするとイギリスからの配送料が無料になるのです。そもそもあらゆる商品が安い!特に最近は円高基調のお陰もあって、その安さに拍車が掛かっています。それにしても外国製品はともかくとして、シマノやキャットアイやブリジストンやパナレーサーなどの日本メーカの製品も、びっくりする程安いのであります。
個人として考えれば、こうしたショッピングサイトの利用は当然と云えましょう。何しろ安い訳ですから。しかし日本の自転車を取り巻く状況全体、はたまた日本の経済全体を考えますと、wiggleの安さに喜んでばかりもいられない事に気付きます。そもそもwiggleが安いのは円高によるところが大きい訳でありますが、こうした円高メリットを国内の輸入業者が享受するならばともかく、海外の企業が得しているとなれば、これは由々しき問題でしょう。海外に儲けを持って行かれてしまっている訳ですからね。
ま、そこまで大きな日本経済の問題として考えずとも、自転車業界にとってはかなりのインパクトであるに違いありません。国内の自転車屋さんにお金が落ちるような仕組みを作らなければ、自転車屋さんが絶えてしまいます。高価なロードバイクは購入時に信頼の出来る相談者の存在が必須でありますし、買った後の定期的なメンテナンスも必要です。身近に自転車屋さんがあるからこそ、我々はロードバイクを維持し、安心してサイクリングを楽しめるのです。wiggleは安くて便利ではありますが、皆が殺到すれば、まさしく合成の誤謬そのものとなってしまうでありましょう。
とはいえやはり安さは魅力であります。困ったもんですなぁ。いっその事、エコカー減税・補助金みたいに、自転車にも優遇措置を作ってくれればwiggleなんぞで買い物したりしないのですが・・・。なぁんて言ってるそばから、ミシュランPro4タイヤの入った国際宅急便の箱が届きましたぜ。説得力の無ぇ事、半端なしでありましたとさ。
【つづく】
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