あれこれ memorandoms やすなべ categorized Yasの状況 activities Yasについて about Yas Yasへの連絡 contact us

  原発否定の意味  

 徒然

 あのですね、今回はいつもと違って、真面目に本気に日本の未来を考えてみようと思うのでありますよ。ちょっとカタい話で御免なさいネ。

 未曾有の国難とも呼べる東日本大震災による津波被害と原子力事故から、もうすぐ一年が経とうとしています。原発はすっかり嫌われ者となり、今や国内のほとんどの原子力プラントが停止している状態。ご存じの通り原発は定期点検の実施が法律で定められていて、期限が到来したモノから順番に検査し、検査終了後再稼働するという運用が採られてきました。この再稼働には厳密には地元自治体の許可を得る必要があります。震災前はこうした許可は、まさしく形式的に処理されてきたのでありました。ところが震災以降、各自治体はセンシティブに反応し、こうした権限を行使して再稼働をとめている状態です。

 チームマイナス6%という活動が提唱されていた事を覚えていらっしゃいますでしょうか。温室効果ガスを減らし地球温暖化を防止するという大義を掲げていたあのムーブメントの事であります。化石燃料から脱却し電気に依存する社会を構築しよう。勿論、風力や太陽光などの再生可能エネルギーも使っていくとしても、原子力発電をエネルギーの主軸とし、火力発電所を積極的に減らす事で二酸化炭素の排出量を抑えよう。こうした目標を政府が掲げ、それに向かって邁進しようとしていたのではありませんでしたか。スーパーコンピュータを使ってシミュレートしたら、このまま化石燃料に頼り続ければ、近い将来、地球温暖化は歯止めの効かない領域に入ってしまう筈だったのではありませんか。

 事故を起こした原発を嫌悪し否定する気持ちは分からなくもありません。しかし地球環境全体を(まも)る為には化石燃料への依存割合を下げる事が必須なのであります。風力や太陽光による発電だけでは直近の電力需要を賄う事は難しい以上、今の我々には原発に頼る道しか残されていないのであります。

 ここで一旦、例を挙げてみましょう。飛行機は一定の確率で事故を起こします。だからと云って絶対の安全性が確保されるまで飛行機の運行を禁止するとしたら、我々が飛行機を活用する機会は永遠に失われてしまうでしょう。飛行機が危険な面を持っている事を踏まえた上で、運用を続けながらそうした危険を減らす努力や安全の為の技術開発をするべきだと私は思います。飛行自体を禁止したら何のデータも蓄積されず、一切の工夫や改良の余地はなくなってしまうからです。原発もこの飛行機の話と全く同じであります。運用する事で経験を蓄積し安全性を高めていくべきだと思うのです。

 マスコミや自治体は無責任に100%の安全性を求めます。しかし100%の安全性を担保出来る仕組みなどどこにも存在しない事に気付くべきであります。今回の津波は防波堤を楽々と越えてきました。私は誰のせいでも無いと考えています。地震の規模が人々の想像や想定を超えていたという事なのです。悪者探しは安易な方法でありますが、解決への糸口とはなり得ません。我々が今すべき事は、責任の所在を追求する事ではなく、こうした事故を繰り返さないようにする仕組みや決まりや技術を開発する事でありましょう。

 マスコミを含め、皆、感情論に走り過ぎです。菅直人首相(当時)は稼働中だった静岡県の浜岡原発を停めさせました。防波堤の高さが不足だからというのがその理由です。この話には二つの矛盾が存在します。一つ目は福島第一の事故は防波堤の高さ不足が絶対的な原因ではなく、交流電源の喪失が直接の原因だった点です。原子炉自身が津波で壊れた訳ではないのです。バックアップ用の別系統の高圧線の整備や、ディーゼル発電機の建物高所への設置で、安全性は十分に確保出来る筈です。

 二つ目は原発は例え運転を停止しても完全な冷温停止状態にはならない事を考慮していない点です。稼働中だろうが停止中だろうが、交流電源が失われれば燃料棒や使用済み燃料は加熱し、放置すればメルトダウンに繋がる事を忘れてはいけません。原子力プラントに必ず複数の原子炉が存在するのは、停止中の原子炉を冷やす為の電力を、隣の原子炉に賄わせる為であります。プラント内全ての原子炉を同時に停止する事の危険性や愚かさを、自治体や政府関係者はもっと認識すべきでしょう。

 原子炉は二機以上の並列稼働が原則なのです。全ての原子炉を停止してしまえば、冷却は外部からの送電に頼らざるを得なくなります。浜岡が全機停止状態の現在、外部からの送電設備が故障しただけで、メルトダウンの危険に晒されるのです。

 東日本の復興の為には莫大なお金が必要です。我々日本人は早急にこれらの予算を稼ぎ出さなければなりません。その為にも電力の安定供給は必須の条件であります。感情論を振り回すのではなく、工業的なアベイラビリティを早急に向上させ、原発を再稼働させなければ、日本は潰れてしまいます。可及的速やかに実施しなければならないのは消費税増税などではなく、産業の安定・景気の回復であるのは自明でしょう。たくさん稼げば所得税も法人税もたくさん入ってくるのです。直接税だろうが間接税だろうがそれは徴収方法の違いでしか無く、原資を稼ぎ出す体力が国民に無ければ、結局、税収は上がらない事に民主党は気付かないのでしょうか。

 かつて関東大震災の復興処理に失敗し原資の捻出を海外植民地に依存せざるを得なくなった事が、最終的に中国出兵を経て太平洋戦争参戦に繋がった事実を我々日本人は忘れるべきではないと思うのです。勿論今は平和憲法がありあの頃とは違いますから、安易な軍国主義への傾倒は無いと信じますが、だとすれば静かに経済的な死に向かうという選択しか我々に残されていない事を認識しなければなりません。

 政府は国の借金の問題を小手先で凌ごうとしているようにも見えます。解決の為には、思い切った所得倍増政策が必要だというのに。借金は働いて返すしかないのです。このままではこの日本という国を我々の子供たちに引き継ぐ事が出来なくなってしまいそうです。安全性を徐々に高めつつも早急に原発をフル稼働させ、産業を安定させる事が、東北の復興の為にも我が国の経済的再生の為にも、必須の事であると思うのであります。

 プラントの交流電源の多重化は、少なくとも沿岸防波堤の整備よりも迅速かつ安価に整備可能でしょう。現政権はタスクの優先順位を見誤っていると思います。早くしなければこの国は取り返しの付かないレベルにまで衰退してしまいます。こうした動きをボトムアップで行なう事は至難でしょう。今こそ強いリーダの出現が望まれます。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

「あれこれ」の目次に戻る

Copyright(C) by Yas/YasZone