近、住宅リフォームを勧めるセールスマンが程久保基地によくやって参ります。私の仕事は平日午後からですので、午前中は家にいる事が割と多く、故にこうしたセールスの訪問を受ける機会も多くなるという訳です。勿論、自転車練習に出掛けたり、こむ散歩に出掛けたりもするのですが、フルに外出してる訳ではありませんしね。こうした平日の午前中の訪問販売は、主に専業主婦やお年寄りをターゲットとしているのでありましょう。これが人をバカにしていると申しますか、実にいい加減な詐欺まがいのセールスが結構多いのでありますよ。
「こんにちは、私この地区を担当させて頂いております○○建設の△△と申します」
「あ、はい。一応初対面なんで、失礼ですがお名刺を頂けますか」
「え。あ、名刺は今無いんで」
「(名刺無くて訪問って、まじ?ま、いいや。)それでどう云ったご用件ですか?」
「私どもは福岡の建設会社でありまして。ところでご主人、私ども○○建設ってご存じでいらっしゃいますでしょうか」
「ごめんなさい、ちょっと聞いた事ないんですが(上場会社でもなきゃ福岡ローカルの建設会社なんて知ってる訳ねぇじゃん)」
「そうですか。福岡では割と有名な大きい会社なんですがね。従業員も30人も居ますし」
「(従業員数30人って少なくとも「大きな会社」とは呼ばんよなぁ)スミマセン。福岡は不案内なもので。で、どのようなご用件でしょうか?」
「ご主人、太陽光発電ってご興味ありますか?」
「無い事もないけど高価いんでしょ?今は導入は考えてません(な〜んだ、ソーラーパネルの営業かぁ)」
「それが今ならお安く導入出来るんですよ。工事費込みで初期費用たったの500万円」
「500万!!『たった』って金額じゃないでしょう。(何考えてんだコイツ)」
「相場よりはかなりお安くなっております」
「(嘘こけ高価過ぎるぜ)しかも屋根の広さも見ないで何で金額が決まるのさ」
「どんな広い屋根でも500万円定額でやらせて頂くという訳でありまして」
「(ホントかぁ?、ま、いいや。)ともかくね、うちは月の電気代が1万円くらいなんだよ」
「はぁ」
「全て太陽光で賄えたとしても元を取るのに500ヶ月掛かる訳でしょ。償却まで約42年だよ(そもそも屋根のパネル程度のシステムで世帯電力全てなんて賄える筈ないし)」
「でも余った電力は電力会社に売る事が出来るんですよ」
「(寝ぼけんなよコイツ)あのね、現在我々が使ってる電力量の2倍を仮にそのシステムが叩き出したとしても、元を取るのに21年掛かるんだよ(しかもそんなに発電するなら広い庭に一面にパネルを広げないと無理だし)」
「すごく発電させればもっと早く元が取れます」
「(完全に寝ぼけてるなコイツ)そんなこと云ったって晴れの日ばかりじゃないしさ、今の電気代を全て賄うだけじゃなく更に同量の売電を可能にするって、どう考えても無理でしょ。本格的な発電所じゃないんだし。まいいや、それで、そのシステム、1平方メートル当たりどのくらい発電量を見込んでるの」
「は?」
「だから年間アベレージで、単位面積当たり一日何キロワットアワーあると見積もってるの?」
「あの私、ソーラーパネルをご提案に来ただけでして、専門家ではないので、その辺のところは分かりかねるのですが」
「(おいおい、何言ってんだか)何年で元が取れるのか分からないで打ち合わせは出来ないよ。じゃこれで話はおしまいね。はい、さよなら」
こうなると彼が工事業者かどうかも怪しい様子です。最悪、空き巣狙いが在宅確認しているだけの可能性すら否定出来ません。ま、そこまで疑って掛からずとも、まともな工事提案ではありませんわな。しかもシステム単価500万円って相場と比べても、あり得ないほど高価いし。
実際のところ、最近とみにこういった怪しい訪問が増えているのでありますよ。曰く「オール電化住宅にリフォームしましょう」、曰く「放射性セシウムを測定し除洗致します」、曰く「建物全体をジャッキアップして耐震構造住宅に改造しませんか」。いずれも百万円単位の設備投資のお話。そんな高価な設備をアポ無しで売ろうってんですから、ハナからまともな話の筈がありませんや。
先日とうとう、こうした怪しい訪問の究極版がやって参りました。
「こんにちは、本日はリフォームの件でお伺いさせて頂きました」
「あ、はい。でも家建てたばっかりだからリフォームは間に合ってますぜ」
「でもご主人、普通のリフォームの提案じゃないんですよ」
「ふ〜ん。先読みするみたいで悪いけどさ、ソーラーパネルの導入やオール電化工事も今は考えていないよ。エネファームは音がウルサいから入れる気無いし、放射能の除洗は要らない。ウッドデッキは既にあるし、建物は東京都の最新の耐震建築基準をクリアしているし、光ファイバも導入済み。シロアリ駆除はやってからまだ数年しか経ってないし、床下換気システムは新築時から導入されてるよ」
「実はご主人、私どもの提案はそれらを超越した最新のものなんですよ」
「へ〜、そんなのあるんだ〜。で、どんな提案なのさ」
「私ども☆☆土建の提案させて頂いておりますのは、ガスと電気の両方を活用する、『ハイブリッド住宅』で御座います」
「まさか、それって」
「ええ、エアコンを中心に電気で暖房を賄いつつ、パワーが必要な台所のコンロとお風呂や給湯はガスを使うという、いわば良いトコ取りのハイブリッド住宅で御座います」
ははははははははは。それって、単なる『普通の家』じゃん。平日の午前中って、まじでこんなのがガンガン来るのでありますよ。お年寄りとか、結構、騙されちゃう方も多いんじゃないかなぁ。まったく、油断も隙もありません。でも、こうした馬鹿げたやりとりを、結構楽しんだりもしている私で御座いました。それにしてもこんな営業が横行するなんて、不景気故の、さもしい話・・・。
【つづく】
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