老眼鏡を買ってみた　　

　は近視でありまして、普段はコンタクトレンズを使用しています。高校3年生からずっとですから、都合28年間。実に人生の過半をコンタクトレンズとともに過ごしている訳であります。

　最近の流行は、使い捨てのソフトコンタクトでありましょう。ワンデイアキュビューとかね。私は最初に使い始めたのがハードコンタクトレンズだった事から、未だにハードを使い続けています。昔に比べれば酸素透過率は飛躍的に向上し、連続装用も出来るようになりました。もう、こうなりますと、はっきり言って私自身の「眼」そのものと申し上げても過言ではありません。メガネと違って視野が狭くなったり、湯気で曇ったりしませんからね。私にとってコンタクトレンズは、既に体の一部なのでありますよ。

　非常に快適な私のコンタクトレンズライフでありましたが、最近になってちょっと気になる事が出て参りました。スマートフォンでメールを閲覧する際、画面がチラつくように感じるのであります。はじめは近視の度が進んで、コンタクトが合わなくなっているのかなと考えました。でも変だなぁ。私は2年ごとにコンタクトレンズを交換していて、現在のレンズは新しくしてからまだ1年も経っていないのでありますよ。そこで、かみさんに相談してみました。

「あのさ」
「どしたの」
「最近、メールが見にくいんだけどさ」
「ふ〜ん、それって普通でしょ」
「普通じゃねぇよ。急に見にくいんだよ」
「普通だと思うけどなぁ」
「そうじゃなくて、コンタクトの度が合ってないみたいなんだよね」
「まじで言ってんの？」
「まじだよ。だからコンタクト新しくしようかなぁって」
「それって無駄でしょ」
「無駄じゃねぇよ。メール見にくいと困るんだよね」
「あのさ、もしかしてさ」
「？」
「新聞とかも見づらくない？」
「どして分かるの？実はそうなんだ」
「あのね、それって老眼だよ」
「は？」
「だからね、老眼だってば」
「まさか」
「まさかって、45歳なら普通でしょ」
「まじ？」
「加齢によるモノだね」
「加齢って単語を使うな」
「だってホントだもの」
「認めたくない」
「認める認めないの問題じゃないの。老眼鏡、買いなよ」
「どこで売ってるんだ」
「カインズホームで1,000円で売ってたよ」
「まさかとは思うが、念の為、試してみよう」
「まさかじゃなくて、まじだってば」
「認めたくない」

　という訳で、カインズホームに出掛け、老眼鏡を試してみる事に致しました。老眼鏡売場には、テスト用として列車時刻表の縮小コピーが置いてありました。なんと、老眼鏡を掛けると細かい文字がはっきり見えるではありませんか！！こりゃビックリ！！

「おい」
「なに？」
「すげ〜良く見えるぞ、コレ」
「でしょ。買いなよ。1,000円だよ」
「やだ」
「何でよ？」
「加齢を認めた事になってしまう」
「あきらめなさいよ、れっきとした老眼なんだから」
「老眼って言うな」
「じゃ何て言えばいいのよ」
「え〜と、『壮年性近距離限定焦点合わせ困難症』」
「面倒くさい人だねぇ、老眼で良いじゃん」
「だめだ」
「わかったわ。じゃその壮年性近距離限定焦点合わせ困難症対応メガネを買えば？」
「そうする」

　という訳で、生まれて初めて壮年性近距離限定焦点合わせ困難症対応メガネを購入したのでありました。いやぁ、快適であります。若い頃って、こんなに良く見えてたのね。悔しい話ではありますが、加齢による身体の衰えを認めざるを得ませんなぁ。え？何々？俺も老眼鏡試してみようかな、だって？壮年性近距離限定焦点合わせ困難症だよ。老眼って言うな！

【つづく】

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