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  携帯ビジネスの横暴さ  

 徒然

 携帯電話のビジネスって、透明感に欠けるというか、公正ではないというか、な〜んか騙されているような気がしませんか。

 ○○プランとか△△ホーダイとか、契約オプションが多岐に渡り過ぎて、果たして月当たりの経費が幾ら程度の契約なのか、ちっとも分からないのです。もしこれが他の商品、例えば化粧品の通販なんかで実施されたら、必ずやクレームや法令違反に繋がるような気がしますが、携帯電話の場合は何故か許されてしまう。不思議であります。独禁法に触れないのかしらん。

 特に不公正な匂いを感じるのは、パケホーダイプランであります。TCP/IP通信はパケットと呼ばれる通信単位で、やりとりを行いますが、このパケット数に応じて課金が発生するいわゆる「従量課金」に対して、一定の契約料を支払う事で、上限金額以上の請求が行われない契約形態が、パケット放題、いわゆるパケホーダイです。基本的にHTTPプロトコルのWEBブラウジングだろうが、TELNET方式のメール送信だろうが、FTP方式のファイルダウンロードだろうが、これらは全てTCP/IPプロトコル上で成り立っている上位レイヤな訳ですから、通信キャリアである携帯電話会社にとってみれば、同様の通信に過ぎない筈なのでありますが、このパケホーダイには使い方によって、何故か上限金額の違いが設定されているのです。ここではAUを例にとってご説明申し上げましょう。AUのパケホーダイには、1.EZ-WEB限定の上限金額、2.PCサイトビューアを用いた際の上限金額、3.MODEMとして携帯機以外の機器用の通信に使用した際の上限金額、の3つが存在します。何だかおかしいでしょ?

 EZ-WEBというのは、携帯電話専用サイト形式の一つです。携帯電話黎明期において、技術的な問題によって、携帯から普通のインターネットサイトを見れない時代がありました。そこで携帯電話会社が作った専用のサイト形式の一つがEZ-WEBだったのであります。通常のサイトがHTML(Hyper Text Markup Language)形式のスクリプトで記述されているのに対し、携帯電話用の独自のHDML(Handheld Device Markup Language)形式スクリプトを用いて記述されていました。一応の互換は確保されていますが、あくまで「一応」に過ぎません。一般のサイトとの決定的な違いは、ヘッダ情報としてサーバが端末IDを要求できる事です。普通のインターネットサイトは匿名性の確保が前提となっており、端末を特定する事は基本的に(あくまでも基本的にはネ)出来ません。それに対しEZ-WEBサイトでは端末IDを用いてユーザを特定出来る為に、例えば有料サイトの使用料を携帯電話会社が徴収代行する事なども出来るのです。

 現在ではEZ-WEBの様な携帯サイトはインターネット上に配置する事が出来ます。携帯は自由にTCP/IP通信を行なう能力を有しているからです。しかし前述の通りEZ-WEBサイトは特殊なスクリプトを用いて記述されていますから、これらの記述を解釈する為のEZ-WEB専用のブラウザが必要になります。

 対して通常のインターネットサイトを見る為には、OPERA等に代表されるインターネットブラウザが必要です。AUの場合はこのブラウザの事を「PCサイトビューア」と呼称しています。実態は単なるWEBブラウザです。二種類のスクリプト言語が存在する訳ですから、二種類のビューアが存在している事自体は仕方のない事です。問題は、PCサイトビューアを用いると、何故かパケホーダイの上限金額が引き上げられてしまう事なのであります。

 先にお話しました通り、EZ-WEBでは課金が容易です。携帯IDを元に簡単に個人を特定出来るからです。故に様々なEZ-WEBサイトで細かく課金設定がなされています。例えば読売新聞の携帯サイトを利用する為には、月当たり210円の契約が必要となります。匿名性の高い一般のインターネットサイトでは、課金の為にはクレジットカード番号の入力等が必要となりますが、EZ-WEBは端末IDを自動的に取得していますから、「課金が発生します了承しますか?」という問いに対して「はい」ボタンを押下するだけで契約が完了してしまうのです。ま、いいか。月にたったの210円だし。こうした心理を利用したビジネスモデルが成り立っている訳です。

 EZ-WEBサイトは記述スクリプトが異なるだけですから一般のWEBサーバ上にも構築出来ます。いわゆる携帯専用サイトです。こうしたEZ-WEBサイトへは、HTTPアドレスを直接入力する事でジャンプ出来ます。しかし携帯には貧弱なテンキーパッドしかありません。PCのキーボードに比べて、圧倒的に入力が面倒なのです。だからこそ、携帯キャリアのトップメニューにリンクが張ってあるサイトは、価値が高くなります。面倒なアドレスの入力無しに、クリックを辿るだけで目的にサイトに到達出来る訳ですから。

 有料サイトは当然ですが多くのアクセスを集めようとします。月に数百円といえ、例えば10万人のユーザが有料登録すれば、月当たり数千万円のサイトという事になるからです。これは美味しい商売です。キャリアのトップページからのリンクがあれば、ユーザをより集めやすくなります。故にキャリアは、トップメニューへのリンクの掲載について、かなりの額を請求しているものと思われます。それでも十分にペイ出来てしまいますものね。

 もし携帯から自由に一般サイトを見れたら、こうした美味しいビジネスモデルは崩れてしまいます。かといって一般サイトへの接続を拒んだら、携帯の契約そのものをとることが出来なくなってしまうでしょう。EZ-WEBブラウザでも一応は一般サイトを見る事が出来ます。しかし互換性をあえて確保しない事で、WEBのレイアウトは滅茶苦茶に崩れてしまうようになっている。この問題はPCサイトビューアを使う事で回避出来るのですが、PCサイトビューアを使うと割高になるような価格設定を採用しているのです。やり方がちょっと汚いですね。

 更に携帯をPCやPDAやカーナビの通信デバイスとして用いると、もっと割高な価格になってしまいます。これでは通信キャリア自身が自由な通信環境の発達や利用を阻害しているようなもので、まさに時代に逆行しているとしか思えません。

 今流行のスマートフォンの多くはEZ-WEBに対応していません。スマートフォンの更なる普及により、こうしたEZ-WEBサイト自身が過去の遺物となる事を願ってやまないのでありました。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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