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  サイクリングロードの将来  

 徒然

 突然では御座いますが、北風と太陽というお話をご存じでしょうか。ほとんどの方が子供の頃に一度は読んだ事があるであろう、有名な童話であります。イソップ寓話に収録されている作品です。ちょっとあらすじをご紹介致しましょう。

   ある日北風と太陽が力比べをしようという話になり、下界を見下ろすと旅人が歩いている。そこでこの旅人の上着を脱がした方が勝ちという勝負を行なう事になった。まず北風が上着を吹き飛ばそうとする。しかし旅人は余計に上着をしっかり押さえてしまい北風は脱がす事が出来ない。次に太陽はポカポカと暖かい日差しをおくってみた。暑さを感じた旅人は上着を脱ぎ、勝負は太陽の勝ちと相成った。何事にも適切な手段を用いるべきで、無理を強いる方法では、物事は結局はうまくいかないのであった。
 
段差の前に一応は表示がありますが、
高さ2cmの段差は危険過ぎます。
 

 多摩川サイクリングロードを日野から南に下っていきますと、府中を過ぎて調布に入ります。最近ここにスピード抑制用の凸凹が出来たのであります。凸凹と申しましても半端な高さではありませんで、1.5〜2cm程度の高さの突起物が、30cm間隔で5〜6個並んでいるのであります。角がはっきりしている台形断面の障害物。時速25Km以上で進入すればパンクは間違いなしの物体です。

 以前より多摩川サイクリングロードにおける自転車と歩行者の衝突事故の問題が取り沙汰されておりました。短絡的に「スポーツ自転車は危ない」と判断した行政側が、これまた短絡的に設置した障害物であります。しかし逆にこの突起が本当に危ない。ママチャリがこれにつっこんで前転するところを2回も目撃した事があります。この障害物をよける為に未舗装の路肩に迂回し、ぬかるみにタイヤをとられて転んでいる場面も見ました。そもそも道路とは、通常の走行が可能なくらいに整備されているという前提で成り立っている施設であります。落とし穴じゃあるまいし、しっかり路面を注視し続けていないと転倒の危険すらあるというのでは、事故を誘発する為のトラップでしかありません。

 そもそも行政側は何故多摩川土手の道を「多摩川サイクリングロード」と呼ぶのかをもう一度考え直してみるべきであると思います。私は新婚当初、川崎の武蔵中原という場所に住んでおりました。その頃の多摩川サイクリングロードには、「サイクリングロードは自転車用道路です。歩行者は十分注意して渡って下さい」と明記されていたのであります。多摩サイは自転車が勝手に乗り込んだのではありません。はじめからサイクリング用の施設だったのであります。

 時代は流れてジョギング人口が激増した事もあり、サイクリングロード上をジョギングする人が増えてきました。しかしそれは大きな問題にはなりませんでした。サイクリングロード上ではジョガーも自転車も左側通行というルールが徹底されていたからです。多少の速度差があろうとも、きちんと決められたレーンが存在する以上、大きなトラブルは発生し得ません。例えば東名高速を考えてみて下さい。4車線に分かれて様々な速度の車が走っていますが、走行車線、追い越し車線という棲み分けがきちんとなされていて、トラブル無くきちんと流れるではありませんか。

 
 突起は5列連続しています。
こんなのが8箇所に設置されたのです。

 問題は、ルールを守らない歩行者の出現でありました。サイクリングロードに広がるように併走するジョガーや、左右を確認せずいきなりサイクリングロードを渡ろうとする人々。これでは事故が起きて当然です。現在、多摩サイはサイクリングロードでは無く、道路交通法上の自歩道であります。故に歩行者優先の原理が働きます。ここでいう「優先されるべき歩行者」とはあくまでも道路の通行者であって、道路の横断者ではありません。道路交通法の原則として、交差点以外の場所で通行者よりも横断者が優先される道路など存在し得ないのです。

 多摩サイは多摩川の土手上を通っております。場所によってではありますが、概ね土手の外側にはサイクリングロードに沿う形で一般道が走っており、土手の内側にはグラウンド等のスポーツ施設があります。土手は堤防としての機能を有していますから、台形の断面で、のり面には草が生えています。この草の斜面を駈け上がってきて左右の確認無しに飛び出してくる人の多い事。基本的に川原ですから、遮蔽物など無く遠くまで見通しが利きます。こんな見通しのいい場所で、左右の確認を一切せずに道路に飛び出す人。これは言い方は悪いですが、非常に動物的と申しますか、一種の馬鹿に違いありません。

 歩行者が優先とか自転車用の道だとかいう論議に至る前のお話であります。横断者はいかなる場合も左右確認の義務があります。勿論、自歩道上を走行中の我々から見れば、元々見通しは良好な訳ですから、飛び出しそうな馬鹿はかなり手前から分かります。あのですね、何度もになって恐縮でありますが、我々から彼らが見えているという事は、彼らからも我々が見えているという事でありまして、単純に注意力の問題なのであります。

 多くの衝突事故はこうした原因によって発生すると想像出来ます。実際には複合的な要因による場合もあるでしょうし、この事のみが原因と言い切る事に無理はありましょうが、大きな一因である事は間違いありますまい。

 調布市の担当者はこうした当たり前の推察を一切せず、短絡的に凸凹を設置したと云われても仕方ないでしょう。あのですね、多摩サイは都会にあって四季や自然を感じられる、人々のオアシスなのであります。車いすの方もたくさんお出掛けになっていらっしゃるのですよ。自転車の方もジョギングの方も車いすの方とトラブルになる事なんて無いのです。唯一あの悪しき凸凹が、車いすの方の楽しい散歩を邪魔するのであります。

 多摩サイを利用されている方はそれだけではありません。目が見えない方のマラソンの練習場所としても使われているのです。すれ違う自転車やジョギングの方が彼らに「頑張って!」と声を掛けて行くのが多摩サイの慣例です。サポート伴走者の方のタオルに掴まって、マラソンをしてらっしゃる方は、当然ですが目が見えません。だから抜かす時もすれ違うときも、明示的に周りから声を掛けるのです。

 彼らは路面がフラットなアスファルトであるという前提で走っています。1.5〜2cm程度の高さの路上の突起物は、彼らが捻挫をするには十分な高さです。調布市の担当者はなにも分かっていない。直ちにこのくだらない設備を撤去するとともに、飛び出しに対する啓蒙活動を進める事こそが、地方自治体の役割である筈だと思うのです。

 河川法によりますと川原の土手の持ち主は国であり、調布市などの自治体はそれを国から借り受けて利用しているに過ぎません。この都会のオアシスを規制でがんじがらめにする事が調布市の役目ではない事に、早いとこ気が付いて欲しいものであります。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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