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 ALPS処理水の海洋放出について(第3話:発生し続ける処理水について整理する篇) 

て、今回は一旦トリチウム(三重水素)から離れて、福島第一原発で発生し続けている「汚染水」、更にそれをALPSで処理した、いわゆる「処理水」について整理してみましょう。

 福島第一原発の事故では炉心溶融(メルトダウン)が発生し、原子炉本体や、核燃料、更に核分裂によって生じた核種が、グチャグチャに混ざった、いわゆる核デブリが発生してしまいました。こうした核デブリはトリチウムなどとは比較にならない高い毒性を持ち、線量も高く、半減期も長く、簡単に回収したり投棄したり出来る代物ではありません。

 チェルノブイリ原発事故の例を見ても、最終的に、福島第一原発は全体をコンクリートで固めてしまう、いわゆる石棺方式で処理せざるを得ないと云われています。現時点で人類の持つ科学技術をもってしても、核デブリの除去はほぼ不可能と云われていますからね。

 しかし、すぐに石棺方式の処理が進められる訳ではありません。メルトダウンした炉心内部の核デブリには、未だ大量のウラン235が含まれており、現在も核分裂が進行中です。核燃料というヤツは、放っておいてもドンドン核分裂してしまうので始末が悪いのです。当然、大量の熱が発生しますし、放っておけば、最悪、爆発に繋がる可能性すらあります。ですから核デブリを水で冷却し続ける必要があるのです。原発の残骸をコンクリートで固める為には、少なくともウラン235の核分裂がおさまり、発熱が止まる事が前提となります。

 直接、水を掛け続けてデブリを冷やしていますから、通常の原子力発電所の排出する冷却水と違って、このデブリ冷却水には、毒性の高い様々な核種が含まれてしまいます。ALPSという装置は様々なフィルタを用いて、これらの核種を取り除く機能を持っているのです。

 ALPSは非常に優秀なプラントで、トリチウム以外の全ての核種をフィルタリング可能です。トリチウムというと何かスゴく怖い物質、というイメージを持ちがちですし、「トリチウム水」=「『トリチウム』という毒物が溶け込んでいる水」、と誤解してしまう人もいらっしゃるかも知れません。

 トリチウムは水素原子に中性子が2つ入った水素原子の同位体(アイソトープ)ですから、あくまでも「少し重い水素原子」に過ぎません。また、トリチウム水とは、水にトリチウムが溶けているのではなく、少量の『少し重い水素原子を用いて構成されたH2Oの分子を含んでいる水』が、大量の普通の水に混じっている状態のモノであります。

 ウランやプルトニウムなどの毒性の高い核種が溶けた、いわゆる汚染水から、ALPSはこれらをフィルタリングするのですが、トリチウムは水に溶けているのではなく、水を構成している部品(水素原子)そのものですから、単なるフィルタリングでは処理出来ないのです。

 デブリ冷却水に僅かに含まれていた重水素が、デブリ内の核種が核分裂する際に放出する中性子を捕獲して、トリチウムが発生しますし、また核デブリには、当然、制御棒も含まれていますけれども、こうしたホウ素が入った制御棒由来のトリチウムも、デブリ冷却水に含まれているという訳です。

【つづく】

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