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 ALPS処理水の海洋放出について(第2話:トリチウムによる被爆量を計算してみた篇) 

回は、トリチウム(三重水素)が、世界中の原発から恒常的に排出されている事をお話させて頂きました。トリチウムは、原子力発電所以外にも、実は太陽放射線によって自然界で常に作り続けられています。トリチウムの半減期は12年半。ベータ崩壊し、ヘリウムに変わります。ベータ崩壊時の放出エネルギーは18キロ電子ボルト位ですので、紙一枚程度で遮断出来る非常に弱い放射線しか出しません。

 放射線が弱い上に、比較的短期間でヘリウムに変わっていきますので、いわば地球の自然浄化作用の許容範囲内で、十分に分解可能なのです。

 更に生物体内にはほとんど蓄積されません。生物学的半減期は10日間と云われています。この事実を元に、WHOは飲料水のトリチウム(三重水素)の基準を、1リットルあたり10,000ベクレル以内と定めています。

 トリチウムを経口摂取した場合の預託実効線量は、1ベクレルあたり0.018ナノシーベルト、すなわち0.000018マイクロシーベルトですので、例えば1リットルあたり10,000ベクレルのトリチウム水(WHOの飲料水としての許容量一杯の水)を毎日3リットル摂取し続けたとすると、1年間で、10,000ベクレル×0.000018マイクロシーベルト×3リットル×365日=197マイクロシーベルトの線量になります。

 197マイクロシーベルトを単位変換すると、0.197ミリシーベルト。ちなみに、地球上で人間が受ける自然放射線の平均被爆量が2.1ミリシーベルト、一回のCT検査での被爆量は撮影部位や範囲にもよりますが、5ミリシーベルトから30ミリシーベルトですので、トリチウムの影響は極めて軽微である事が分かるでしょう。

 WHOの定めるトリチウムの濃度の基準、1リットルあたり10,000ベクレルは、あくまでも「飲料水」としての基準です。今回海洋投棄が始まった福島第一原発からのトリチウム水の濃度基準は非常に厳しく設定されていて、1リットル当たり1,500ベクレル以下に保たれていますから、先ほどの計算の約6分の1、毎日3リットルずつ飲んでも年間被曝量は0.03ミリシーベルトにとどまり、自然放射線と比べても1.4パーセントに過ぎません。しかも実際には投棄水を毎日飲み続ける訳ではありませんから、非常に軽微なレベルである事が分かります。福島第一原発におけるトリチウムの排出基準は、飲み水よりも厳しく設定されているのですからね。

 自然界への影響が非常に軽微だからこそ、IAEA(世界原子力機関)も原子力発電所からのトリチウム水の放出を公式に認めているという訳ですね。

【つづく】

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