ングローブバイクスの店内に入ったところに、ゴールドフレーク塗装のド派手なピストフレームが飾ってあります。大将が現役の頃乗っていた、正真正銘、競輪のフレームであります。このフレームのメーカーがボンバープロ。元々は1988年に鶴岡篤人選手が立ち上げたブランドで、1991年にはNJS認定を取得。主に競輪用のフレームを制作する工房です。チーフビルダは井田倫正氏。マングの大将の提案とは、私のクロモリフレームをボンバープロにフルオーダーする、という夢のようなお話でありました。
出来合いのフレームを買うのと違って、自分の体格や好みに合わせてミリ単位で寸法を指定出来るだけでなく、しなり具合や応力を調節する為にチューブの材質を細かく変える事が可能です。勿論、メッキや塗装やロゴなど自由自在。何しろフルオーダーですからね。
ところが私にはオーダーシートを確定するスキルがありません。例えばシートアングルを何度にするかと聞かれても、どうして良いか全く分からないのであります。私の曖昧模糊としたフィーリングや要望を、具体的な数値に翻訳してくれる有能なインタープリタの存在無しには、スペックの決定は無理でありましょう。この役目を担うのがマングの大将であります。彼は単なる競輪選手ではありません。素人の言葉をプロフェッショナルの使う専門用語に訳したり、逆にプロにしか分からない感覚を素人に分かりやすく説明したりする事の出来る、自転車界の伝導師。一見マックフルーリーが大好きなだけのおじさんに見えますが、まさに天才、希有な存在なのでありますよ。
スペックの決定に関して、大将が居れば鬼に金棒です。一言えば十わかってしまう切れの良さ。本当に頼りになります。
話をしているうちに、フレームのオーダーには、決して法外な値段が掛かってしまう訳ではない事が分かってきました。例えばボンバープロのクロモリオーダーフレームの基本料金が
210,000円。対してブリジストンアンカーRNC7は 160,000円、チネリスーパーコルサは 241,500円です。塗装もメッキも材質も自由に指定出来(勿論作業によってはアップチャージが必要)、ミリ単位で自分に合った寸法で作って貰えるとなれば、安いとさえ云えるかも知れません。
もっと高価なカーボンバイクは世の中にたくさん存在します。そんな高価な「つるし」より、自分の寸法にピッタリの自転車の方が良いとも思えます。ロードバイクは私自身がエンジンなのです。私の寸法にぴったりで、出力効率を極限まで高められるフレームが有ったとしたら、それこそが「私にとっての」究極のロードバイクであると断言出来ましょう。
正確な値段は見積もりを出して貰うまでは分かりませんが、私の希望する、ホリゾンタルなクロモリフレーム、ショッキングピンク、ラグメッキ抜き、シートステー・チェーンステーメッキ処理を実現して、アルテグラで組んだとして、込み込み45万円位というではありませんか。当初、漠然と40万円程を想定していましたから、なかなかいい線のお値段です。
この日の打ち合わせは、一先ずここ迄にします。細かいスペックを決める前に、まずは我が家の財務大臣に、稟議を通さねばなりませんからね。
45万円もの稟議、果たしてすんなり許して貰えるのでありましょうか。ま、あまりクヨクヨ考えたり、不要なまで策を弄したりしても仕方ないですからね。かみさんには直球勝負、ありのままを伝えてみる事に致しやしょう。
【つづく】
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