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  自転車に乗って変態になろう!(第7話:穿いてみれば蜜の味篇) 

 穿いてみるまでは、あれほど敬遠していたレーパンでありますが、意外や意外、すぐにその快適さの虜になってしまいました。

心拍センサってブラジャーみたい

 ま、そりゃそうでしょう。ツール・ド・フランスやジロ・ディ・イタリア等のレースを経る中で、機能的な熟成をされ続けた結果、レーパンはあの形態に落ち着いたのでありますから、自転車に乗るという行動における、最も効率の良いウエアとであると断言出来ましょう。パットのお陰で長時間のサイクリングでもお尻が痛くなるなんて事はありませんし、走行抵抗も最小限で済みます。バタバタした服って意外と風の抵抗が大きいんですョ。その点ピチピチのレーパンは無駄がありません。更にはライディングに関して十分な強靭さも持ち合わせていて、サドルと擦れて劣化するなんて心配は不要なのであります。

 機能的には素晴らし過ぎるレーパン。唯一の問題は「他人の目」であった訳ですが、これにも慣れました。そりゃ初めてレーパンでコンビニ入った時は、ドッキドキでしたよ。ピッチピチのモッコリですからネ。自転車と一緒に行動していれば「あぁ自転車乗りか」と理解して貰える訳ですが、まさかコンビニ店内まで自転車を引いていく事なんて出来ませんしねぇ。

 コンビニにいる全員が私のもっこりに注目しているように感じて、さりげなくヘルメットで股間を隠しちゃったりなんかして。おかしいですよね。実は「さりげなく」と思っているのは自分だけでありまして、他人から見れば逆に不審な動きなんでしょうなぁ、今考えれば。でもね、本当に全員がこちらを見ているような気がしてしまうんです、特に初めての時はネ。実際には私に注目している人なんぞ一人も居ないってぇのに。これって、初めてエッチなビデオを借りた時のドギマギ感に、ちょっと似てますね(笑)。

 更に、現在の空前のロードバイクブームも、シャイな私にとって追い風であると云えましょう。街道沿いのコンビニであれば、どこに行ってもローディを見掛けます。自転車に乗らない方でもレーパン姿のローディを見慣れつつあるのです。あ〜ぁ、心配して損しちゃったぁ。

 こうなりますと、どこに行くにもレーパンにサイクルジャージです。もう、これ以外の格好でロードバイクに乗るなんて考えられません。本当に機能的。他の人にだって勧めちゃいますよ。人間って現金なモンですな。あれほど穿くのを躊躇していたにもかかわらず、これ無しじゃ居られない位、好きになっちゃうんですから・・・。

 レーパンにも慣れてきた、とある土曜日の朝、中距離自転車散歩にでも出掛けようと、家で支度をしている私で御座いました。この日の自転車散歩は、大垂水峠を越え、藤野から日連を抜けて道志街道まで登り、青野原から宮ヶ瀬に出て、橋本から尾根幹線経由で帰ってくる約100Kmのコースを考えていたのですが、ま、ルートの話はこの際置いておきましょう。「支度」とは、すなわちレーパン、サイクルジャージに着替えようとする行為の事でありますョ。

 私の自転車にはキャットアイ社製の多機能スピードメータが装備されておりまして、これが中々の優れモノで御座います。スピードや走行距離の他に、ケイデンス(脚の回転数)や心拍数までリアルタイムに表示されるのです。心拍数データは、胸に付けた心拍センサーから無線でメータに送られます。ですから自転車に乗る時は、常にこの心拍センサを装着していなければなりません。心拍センサーは肌と直接触れ合う事で、微弱な電気信号を拾います。人間ドックの時の心電図と同じ仕掛けなのであります。

 私のレーパンはビブ・ショーツ・タイプと呼ばれるもので、サスペンダー状の肩ひもが付いています。心拍センサをきちんと動作させる為には、まず心拍センサを装着し、その上でレーパンを穿いて肩ひもを掛け、最後にサイクルジャージを着るというプロセスを経なければなりません。微弱な生体電流を拾う為には、服などが間に挟まってはイケないのであります。

 話を「支度」に戻しましょう。レーパンの下には下着をつけない、いわゆるノーパンの状態が普通です。ですから支度と云いましても、かな〜り無防備な状態になってしまう事を回避出来ないのであります。

 まずは、すっぽんぽんのフルチンになります。この状態で、心拍センサを胸に装着します。まるでブラジャーのようです。ここからレーパンを穿く訳ですが、レーパンはそもそもピッチピチに出来ておりますから、穿くのも容易ではありません。まず左足をレーパンに通します。この状態で続いて右足も通す訳であります。この瞬間こそ、もっとも無防備なシチュエーションなので御座います。

 ちょっと想像してみて下さい。上半身は裸で、胸にはブラジャー状の心拍センサを装着。左足をレーパンに通した状態のまま、右足を上げて左足一本でケンケン状態。股間には無防備にもサトイモちゃんがゴロリン。おっと、上手く右足が入らず引っ掛かってしまった。危ない。倒れそうだ。必死でケ〜ンケンとバランスを取る。それに合わせて揺れるサトイモちゃん。ぞ〜さん、ぞ〜さん、お〜鼻が長いのネ。

 ガチャ。突然ドアが開きました。ドアの向こうに立ち尽くす、かみさん。あわわ。状況を説明しなきゃ。この状況を説明しなきゃ。着替えているだけなんだ!自転車で出かける支度をしているだけなんだ!これじゃ変態だと思われる〜!!

 あまりの驚きに、声すら上げられず、息を吸ったまま見つめあう私とかみさん。数秒の沈黙の後、目を大きく見開いていたかみさんの顔が、突然ポッと赤くなり、目をそらしつつも、こう云うではありませんか。

 「これって何プレイ?」

 わ〜ん。違うんだよぅ!!そんなんじゃないんだよぅ〜!変態じゃないんだってば〜!!

 言い訳しようにも、相変わらず右足は引っ掛かったままでありまして、サトイモちゃんをブラブラさせながら、無言でケンケンを続ける私でありましたとさ。

お分かりだとは思いますが、この文章は、すげー、脚色されています(笑)。

【つづく】

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