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  遊びのアンテナ、のばしてるかい?(第5話:二人から始まり二人に戻る篇) 

婚して独身寮を出て、川崎市の武蔵中原にある2DKの賃貸アパートに住み始めました。子供を授かるまでの数年間は、毎日々々二人だけの生活です。私は静岡出身、かみさんは長野出身。仕事の都合で武蔵中原に住んだだけで、彼の地に何の思い入れもありません。故に近所には知り合いも全くおらず、まさに二人で肩寄せ合うように生きておりました。いつでもどこに行くにも二人一緒。他人からの干渉は全くのゼロ。独身時代に経験した、むせかえるように濃密な集団生活から比べれば、まさに180度の転換であります。

 当時はお金が無くて、車も持っておりませんでしたから、出掛けるとすれば電車か歩きしかありませんでした。それでも週末の度にチョコチョコと二人でお出掛けしたものであります。外食費を抑える為にお弁当を作って持っていったりした事を思い出します。

 実は今、あの頃と近いシチュエーションに戻りつつあるのです。上の息子は大学生で、既に家を出て独り暮らしを始めていますし、下の息子も高校3年生ですから、首尾良く志望する大学に受かりさえすれば、来年の春には家を出て行く事になります。約四半世紀掛けて、結局我々は、以前のような二人だけの生活に戻ろうとしているのです。そう考えると人生って何か不思議であります。

 かみさんの遊びのアンテナの指向性と、私の遊びのアンテナの指向性の違いについて、前回触れさせて頂きました。かみさんは常に人との繋がりを求めたいタイプ。しかし今までの彼女の付き合いの多くは息子たちの部活を通じてのモノでありましたから、子供が手を放れつつある今となっては、そういった関係が疎遠になっていくのも自然な流れでありましょう。

 実は彼女は独りでは、外食すら出来ません。独りが苦手なタイプなのです。だからと云う訳ではありませんけれども、新婚の頃のように二人でお出掛けする機会が増えてきたのは、いわば必然と云えるかも知れません。土日といえば私一人で自転車三昧という生活は、既に過去の話となりつつあります。今やほぼ毎週、休みの度に二人で過ごしています。電車で出掛ける事もありますし、車で出掛ける事もありますが、基本的にはそれがごく近所であったとしても、あくまでもお出掛けにこだわっております。家でダラダラ過ごす事は皆無。折角の休日を無為に過ごすのは、勿体無い様に思えてしまうのです。まるで寸暇を惜しんで一緒の時間を過ごそうとしていた、かつてのあの頃のようであります。

 子供が産まれ、父親、母親として振る舞ってきた私たちも、子供達の巣立ちを目前に控え、元のような恋人関係に戻ろうとしているのかも知れません。二人合わせてもうすぐ100歳だというのに、恋人みたいというのは少々変に聞こえるかも知れませんけれども、学生時代につきあい始めて、結婚して、子供たちを育て、現在に至る間で、今が一番仲良しと云っても過言ではないでしょう。プライバシーを吐露するのは恥ずかしくないと云えば嘘になります。しかし、仲が良いのは事実でありますし、それはそれで、まんざら悪いものではないと感じております。たまたま二人の相性が良かったのでしょう。ま、()(かく)、特に最近、互いが互いの影響を受けあって、遊びのアンテナの指向性が似た方向を向くようになってきたのは、紛れもない事実なのでありました。Copyright (C) by Yas / YasZone

【つづく】

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