の子が幼稚園の年長さんになって、我が愛機ZRX1100号に乗る機会も増えてきました。といっても、ほんのちょい乗りがほとんどなんですけどね。ZRX1100号は比較的2人乗り用のステップが高い位置にあるので、小さな子供でもタンデム可能なのです。
もちろん準備は入念にかつ過剰に。ショウエイのフルフェイスヘルメット、しかもスネル規格品のSサイズを被らせ、この暑いのに長ズボンに長袖のジャンバーを着用。どんなに気をつけても転ぶ時は転ぶのがバイクですから、転ぶ前提の装備を装着してお出掛けするのであります。それにしても物入り。ヘルメットっていくら子供用って言ってもそれはサイズだけの話なんですわ。安全性や装備は大人用とまったく同一で、値段も3万5千円以上もするのであります。スネル規格品って高価いのよ。も〜大変。
いいとこ時速60Kmまでしか出さないのですが、そこは子供の事。交差点からちょいと加速すると、「父ちゃん、今、200キロ出てた?」とか聞いて参ります。可愛いじゃありませんか。彼の言う200キロという速度は新幹線ひかり号の巡航速度。200キロ=ひかり号=この世で一番速い速度、という意味なので御座います。
兄ちゃんの方は流石に小学2年生だけあってだいぶタンデムには慣れてきました。往復50〜60Kmのツーリングだったら平気の平左です。昔は後ろで寝られて往生したもんですが、今ではそんな事もなく、タンデムに関してだけ言えば下手な大人よりも上手く乗ってくれます。バイクって後ろに乗る人が初心者だと運転しにくいんですよね。その点、我らが兄ちゃんはコーナリング時の体重移動も堂に入ったもの。運転しててもとっても楽なのであります。
今までは、父ちゃん+兄ちゃん、または父ちゃん+下の子、の組み合わせでしかバイクに乗った事はありません。あったとしても、愛機ZRX1100号に父ちゃん+子供1人、ゼファー750号に母ちゃん1人の二台で出掛けるというパターンだけだったので御座います。3月までは静岡に住んでましたんで、子供のうちのどちらかは婆ちゃんのうちに預けて・・・というのが通例だったのであります。
ご存知の通り、うちの母ちゃんライダー、普段ナナハンなんぞ転がしとるんでありますが、押しも押されぬ初心者マーク。それ故タンデムなんてとんでもないのこんこんちき。タンデム、イコール事故は必至。というかほとんど心中行為なので御座います。何しろ私と二台でショートツーに出掛けて、「今ねぇ、曲がりきれなくて側溝に落ちそうになっちゃったぁ」とか、「ガソリンスタンドは転びそうで行きたくないから燃料入れてきて」とか普通ではない発言が目立つものですから、私としても彼女にタンデムを禁止していたのでありました。
ところが彼女なりに練習を繰り返すうち、だんだん上手になってきたのであります。以前に比べれば別人のよう。ふらふらしたりギクシャクしたりする事も極端に減り、こりゃ中々の腕前。そろそろタンデムにチャレンジでもしてみましょうかってな話になったので御座います。
東京に引っ越して来て、静岡に居た時みたいに気軽に子供をじじばばに預ける事も出来ませんが、母ちゃんライダーがタンデム可能となればそんな心配も吹っ飛びます。家族4人でツーリングなんて良いじゃありませんか。ね、羨ましいでしょ?かくして、2002年6月のとある日曜日、近所の立川昭和記念公園にショートツーに出掛ける事になりました。片道約5Km。小さい一歩ですけれども、我々にとっては大きな前進なのであります。
入念に暖機運転を済ませた母ちゃんライダーは、初めてタンデムステップを出しました。大丈夫だろうか。初めてのタンデム。しかも小さい子を乗せての二人乗りです。心なしか母ちゃんライダーは緊張の面持ち。そうだろう、そうだろう。誰でも初めて後ろに人を乗せる時は、緊張するものなのだよ。
このくそ暑いにも関わらず、家族4人は長袖のジャンパーを着込んで完全装備。いよいよ5Km先の昭和記念公園に向かって出発なのであります。
「母ちゃん、僕のヘルメットどこ?」 下の子が尋ねます。ふと見ると下の子だけヘルメットを被っていない。ありゃーそうでした。今まで父ちゃんとしかタンデムしなかったので支障はなかったんですが、実は子供たちのヘルメットは共有品なのでありました。4人家族なのにも関わらずうちにはヘルメットが3つしかなかったので御座います。とほほ、まるで漫画ですな。かくして緊張の母ちゃんライダーの初タンデムは、一瞬にして夢潰(つい)えたのでありました。
【つづく】
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この文章は、ほとんどホントの話ですが、一部、脚色されています(笑)。 |