かしさぁ、我ながら良くやってると思うよ。マジで。だってさ、この原稿だってほとんどリアルタイムでアップしてるじゃん。お遍路のレポートはネット上に数あれど、ライブでレポートするのってほとんど無いでしょ。あったとしてもこれ程の原稿量こなしてるヤツは居ないよ(笑)。ほとんど仕事だね、こうなると(爆)。
2001-11-10(土)
- 朝、ゆっくりとライダーズイン雲の上を出発。ここ、雲の上というだけあって、結構標高があるんだよね。朝はマジで寒いよ。特に昨晩は冷え込んだから、思わず電気ストーブ借りちゃったくらいだもんね。ポカポカの部屋から出発するのって、辛いなぁ。
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高知県檮原町(ゆすはら)
ライダーズイン雲の上にて。
屋根があるって、快適ですね(笑)。 |
- 今日はほとんど移動日。四万十川を遡って、四国カルスト見物に来ちゃったんで、40番観自在寺まで80Km以上戻らなくちゃ。国道197号、国道320号と乗り継いで、まずは海岸端の愛媛県宇和島市へ。その後、国道56号をひたすら県境近くの愛媛県御荘町(みしょう)まで南下。40番観自在寺を目指します。結局、またすぐにこの道を戻らなくちゃならないんだよね。ま、しょうがないか。
- 途中宇和島市内で渋滞に巻き込まれた事もあり、やっとの思いで、お昼頃40番観自在寺に到着。いよいよここから菩提の道場伊予愛媛が始まります。まずは鐘楼に上がって鐘をひとつき。ゴーンという音が空気を震わせます。さて、伊予愛媛も気合を入れて攻略するぞ。
- 続いて41番龍光寺は、宇和島市の北の愛媛県三間町(みま)。せっかく南下した国道56号線を今度はひたすら北上。行ったり来たりだよ。でもいいや。行きと違って、帰りはビュンビュンだもんね。ネズミ捕りやってないの確実だからさ。国道56号内海町、津島町付近は高速コーナーの続く快適なシーサイドコース。天気はピーカンで気持ちE。由良半島やその周りの無人島までくっきり見えました。
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国道56号愛媛県内海村付近にて。
御覧の通り、最高の天気。 |
- またもや宇和島市内の渋滞を抜けて、2時間掛かって、41番龍光寺に到着。ふう、長かった。この時点で既に2時過ぎ。今日はほとんどお参り出来そうもないなぁ。
- 42番仏木寺にお参りして、参道のところにある、お休み処「長命水」でやっと昼飯。もう2時半だぜ。腹減った〜。でも昼食時間を外していたので、ほとんどのメニューがオーダーストップ。店員さんも賄い飯を食ってるしさ。仕方が無く今日の昼ご飯は大福になりましたとさ。
- ところでさ、普通のお遍路さんって「金剛杖」って呼ばれる木の杖持ってるんだよね。南無大師遍照金剛・同行二人って書いてあるヤツ。おいらはバイクだから持ってないけどさ。この杖にまつわる話で、「橋の上では杖をついてはいけない。弘法大師が橋の下で寝ているから起こさないように」ってのがあるんだ。結構みんな厳格に守ってるみたい。
- おれもその話はネットで仕入れて知ってたんだけどさ、なぜかってのは知らなかったのよ。長命水のおじさん曰く、「松山自動車道大洲ICの下にその橋が現存する」との事。ふむふむ。必見だね。場所的には43番名石寺から44番大宝寺への移動に松山自動車道を使うつもりだから、明日、確認しに行こうっと。
- ところが長命水のおじさんの話は続く。「そこは『野宿修行』の道場として番外札所になっている。君も是非ともそこで野宿修行しなさい。」 「まあ、基本テント+寝袋なんで、毎日が野宿修行みたいなもんですからね」 「違う!そんな文明の利器を使ってはいかん!弘法大師様と同じようにムシロの上でただ寝るのだ。そこではみんな、そうしておる」。
- まじかよ〜。おじさん、今、11月も半ばだぜ。風邪引いちゃうよ、というか死んじゃうかも(笑)。自分は昼間から店の中ストーブ焚いてあたってるくせに(爆)。
- 死ぬのは嫌なんで、件の番外札所は明日ゆっくり訪れる事にして、今夜の宿をツーリングマップルで探す。10Km程ルートからは外れちゃうけど、有りましたよ良い物件が。愛媛県野村町立葛川渓谷キャンプ場。無料です。無料。うひひ。ただし使用に関しては役場の許可がいるみたいなんで、すかさず役場に連絡。空いてるってサ。この時期じゃ当たり前か(笑)。
- 役場の人の話では「一応規則なんで、一旦役場に来て貰って、署名捺印願えますか」との事。お役所だねぇ(笑)。はいはい、行きますよ。だって無料なんだもん。
- 43番名石寺にお参りして今日はタイムアップ。県道29号→国道441号を12Km東走して野村町役場へ。この間ずっと道は登り。嫌な予感がする。
- 予感的中。かなりの標高。滅茶苦茶寒いじゃん。泊めれるのかよ、こんな寒さの中で。でも、既に時間は6時過ぎ。他の物件を捜している暇はありません。奥歯を噛みしめて、この寒さの中、寝るしかないか・・・。
- と、そこへ突然の朗報。やっぱり日頃の行いの良さだろうね(笑)。それとも人相の良さかな(爆)。野村町立葛川渓谷キャンプ場にはテントサイトの他にバンガローもあるんだって。「こう寒くちゃテントは無理だよ。バンガローにしたらどうですか」 「え?だってバンガローって高価いんでしょ」 「う〜ん。誰も居ないし、無料で良いや」。やった〜。無料だよ。バンガローだよ。屋根下だよ。それにしても無料とは、おいら、よっぽど金持ってなさそうに見えたんだろうなぁ(笑)。野村町役場の皆さんゴメンなさい。実はおいら、この時点で、20万円以上の現金持ってました。VISAもゴールドカードです。でも、無料は嬉しいなぁ。
- 嬉しい誤算で屋根下に泊まれる事になりました。6畳くらいのバンガロー。室内にはなんとコンセントがあるじゃないっすか。これで充電もバッチリ。電灯もつくしね。それでも寒いんで、ランタンつけっぱなしにして寝ました。かなり快適な眠り。おやすみなさい。
- と思ったら、子分のばんぱくから電話。「こんにちは、お元気でやってるようで。寝てました?」 「おう、寝てたよ。で、なんか有ったのかよ?」 「いえ。寝てるかな〜と思いまして。それじゃおやすみなさい」。ふざけやがってこのヤロー(笑)。明日の朝、絶対仕返ししてやるからな、待ってろよ、ばんぱく!
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愛媛県野村町立の
葛川渓谷キャンプ場のバンガロー。
やったー屋根下だ。 |
2001-11-11(日)
- 朝5時半起床。外に出て寒暖計を確かめると、なんと摂氏2度。バンガローでホントに良かった。テントだったら寒くて寝てられなかったと思うよ。
- ここ桂川渓谷キャンプ場は宇和川に掛かる野村ダムのすぐ上。特に今朝は冷え込みがきつかったんで、水温と気温の差が大きかったんだろうね。スゲー霧。でも霧が出るって事は放射冷却が有ったって事で、好天の証拠なんだよ。8時に役場にバンガローの鍵を返して、44番大宝寺に向けて出発。
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野村町立葛川渓谷キャンプ場の朝。
今日も天気良さそう。 |
- 愛媛県野村町から、久万町(くま)の44番大宝寺までは約70Km。今日も移動が大変だ。とりあえず、昨日お参りした43番明石寺まで戻ってファミレスで朝食。だって体が冷え切っちゃったんだもん。昨晩の仕返しに、ばんぱくの家にイタズラ電話。ばんぱくめ、寝ぼけてやんの。ざまーみろ(笑)。
- 飯食ってコーヒー飲んだら体も温まったんで、出発。国道56号を愛媛県大洲市まで北上。昨日長命水のおじさんに教えて貰ったポイントに行くとありましたよ。番外札所が。十夜ヶ橋って言うんだって。
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十夜ヶ橋にて。
上の道は国道56号線。
松山自動車道大洲IC入り口にあります。 |
- 弘法大師が修行中、どうしても宿が無くて仕方がなく寝たのがこの橋の下。その時、あまりの寒さに一夜が十夜にも感じられたって話から、十夜ヶ橋って名前がついたみたい。今は番外札所になっていたので、納経印を貰っちゃいました。これで、結願すると八十八ヶ所じゃなくて、八十九ヶ所になっちゃうよ(笑)。
- 松山自動車道を1区間だけ利用して、内子五十崎ICでおり、国道380号線をひたすら東走。おりしもこの日は国道380号線が自転車ロードレースの会場になっていて、いたるところ自転車だらけ。しかもレースだから、みんな滅茶苦茶な運転してるんだよね。転倒自転車は目撃しただけで4台。走りにくいったらありゃしない。愛媛県久万町で国道33号に左折してすぐに県道12号へ右折。嗚呼、44番大宝寺は遠かった。
- 44番大宝寺から45番岩屋寺までは20分程度。途中、古岩屋温泉付近で、紅葉が見事でした。
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古岩屋温泉付近にて。
紅葉が見事。
撮影会や写生大会も催されてました。 |
- 45番岩屋寺は、山門から1Km弱の参道を登らなければなりません。結構大変。でもその甲斐あって、その風景は圧巻。お寺そのものが岩にくっついてます。洞窟もあるしね。今まで回ったお寺の中で、一番印象が強いのがココ。お遍路じゃなくても、行ってみる価値アリですぞ。
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45番岩屋寺にて。
ね、ホントに岩にくっついてるでしょ。
というか、岩に埋まってるって感じ。 |
- 46番浄瑠璃寺からは、松山市内のお寺。国道33号線は行楽帰りの車で、渋滞。この日は、48番西林寺でタイムアップ。2連泊の予約を入れてある松山ユースホステルに移動します。
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愛媛県松山市の松山YHにて。
嬉しいね。今日は蒲団で寝れるよ。 |
- ここ、松山YHは、漱石の坊ちゃんで有名な道後温泉のすぐそば。行ってきましたよ〜。木造の3階建てで、味のある建物。良いねぇ。温泉に蒲団だよ。至福。
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愛媛県松山市の道後温泉にて。
ここ、浴衣貸してくれて、入浴後にお茶とお菓子が出るんだよ。
雰囲気があります。 |
- ユースに帰って、長逗留してるおじさんと夜中まで話す。精神科の看護士さんで、研修のため既に1ヶ月このYHにいるという人。新居浜市の方だそう。精神科は色々大変みたいで、実地の生々しい話を興味深く聞く。どの商売も大変だなぁ。
2001-11-12(月)
- 今日は松山市内のお寺だけに集中。距離が短いし、数も限られてるから楽勝。49番浄土寺からスタート。
- 51番石手寺は、お遍路巡拝の風習発祥のお寺。なんでも、衛門三郎という人のところへ修行中の弘法大師が泊めて貰おうとしたところ、衛門三郎が追い返しちゃって、天罰が下ったんだって。衛門三郎はその事を反省して、弘法大師を追いかけて遍路巡拝を始めたんだそう。衛門三郎は死ぬ直前に弘法大師に再会することが出来て、一件落着。弘法大師曰く「お前の罪は遍路巡拝によって消えた。お前の望みをかなえてあげよう」。すると衛門三郎「次に生まれ変わるとしたら殿様の家に生まれたい」。その願いがかなってか、松山の殿様のうちに生まれた赤ん坊の手を広げてみると、石が握られていて、その石に「衛門三郎の生まれ変わり也」と書かれてあったんだって。だから石手寺。これ、石手寺門前のお土産屋のおばちゃんから聞いた話。
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51番石手寺にて。
衛門三郎の石。 |
- 今日は、2時にはお寺巡りは完了。53番円明寺まで回りました。実は、広島在住で、幼少時代をここ53番円明寺近くで過ごした古谷さんという方からメールを貰ってたんですよ。一部を紹介しますね。
松山市内の最後にある札所が円明寺で、変哲もない寺が町の中にあります。
この寺の前を通り小学校へ通学していたので、馴染み深い札所です。
お遍路さんの印象には残らないと思いますが昔は伊予かすりを織る音が聞こえて、冬になると、みかんの香りがしたものです。
松山の遍路道らしい姿が残っている場所かも知れません。
この付近の海岸線は瀬戸内らしい風景で、穏やかな海の砂浜と島影があり陸ではみかん畑の深緑を目にすると思います。
故郷を離れると穏やかな地方だったと解かるものです。
古谷さんのいう通り、この付近の海岸線は、いかにも「瀬戸内」って感じでよかったっす。円明寺まで、海沿いの道で遠回りして行ったんですよ。
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53番円明寺付近の海辺にて。
「瀬戸内」って感じの穏やかな海。 |
- 今日は松山YHに連泊なので、53番円明寺でお仕舞い。レッドバロン松山店でオイル交換してきました。それにしても松山市内をバイクで走るのにはコツがいります。路面電車の線路って、慣れないと怖いよ。
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松山市内の路面電車。
静岡には無いから、ちょっとめずらしい。 |
- さて、今夜も道後温泉に浸かって、ビール飲んで、布団で寝ます。至福(うふふ)。
2001-11-13(火)
- 至福の時を過ごした松山YHともお別れ。昨日のうちに松山市内のお寺は制覇してあったんで、今日は愛媛県今治市(いまばり)まで、国道317号を使ってショートカット。渋滞はないし、二車線きっちりある峠道で、快適に飛ばせました。
- 今日は、今治市内の54番延命寺からスタート。59番国分寺までは思ってたよりも早くクリア。そこで、欲張って、60番横峰寺まで行く事にしました。
- 60番横峰寺はスゲー山の中。しかも夕方になってきてどんどん体温が奪われていきます。思わず後悔しちゃったよ。欲張んなきゃ良かったって(笑)。寒かったけど、お参りを済ませて無事下山。山の中のお寺って、寒いから行くの大変だけど、いろんな意味で空気がピリッとしていて、個人的には割と好き。
- 既に愛媛県西条市まで来ちゃっているけど、今治市まで戻る事にします。瀬戸内の海を見ながらキャンプしたいんだもん。ここ西条市や隣の新居浜市は有数の工業地帯だから、海岸沿いにテント張れるような所がないのよ。とりあえず、今治の湯浦温泉にて入浴。400円也。
- 今治市の桜井海岸でテント張れそうなところを物色。でもスゲー風が出てきちゃったんで海岸沿いはやめました。という事で、道の駅湯浦温泉で野宿。あ〜あ、単に野宿するんだったら、戻るんじゃ無かったよ。といっても戻ったのは10Km位だけなんだけどさ。
- 温泉入って、体が暖かくなったんで、安眠出来そうです。国道沿いだから車の騒音がちょいとうるさいけど、寝ちゃえば関係ないしね。おやすみなさい。
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愛媛県今治市の、
道の駅今治湯浦温泉にて。
もちろん野宿です。 |
2001-11-14(水)
- 朝5時半起床。まわりは仮眠中のトラックだらけ。勿論みんなトラックの中で寝てるのよ。テント張ってるのはおいらだけ。11月半ばだもんなぁ、当然か。
- 素早く撤収して、出発。今日は61番香園寺からスタート。
- 64番前神寺までは午前中にクリア。だってほとんど同一町内に固まってる感じなんだもん。でも、ま、移動が少ない分、ゆっくりお参りできるから良いな。
- 今日はあと一ヶ所、65番三角寺だけの予定。66番からは讃岐香川になるんだよ。あと一つで菩提の道場伊予愛媛も終わりって訳。65番三角寺まではルート的に松山自動車道が使えるし、ここらでちょいと温泉にでも寄り道しますか。
- 新居浜から県道47号で南の山に入って7Km程で、道の駅マイントピア別子へ。この道の駅には温泉が付帯してるんだ。行ってみると800円にしちゃかなり立派なお風呂。露天あり、サウナあり、打たせ湯あり、寝湯あり、ミスト浴ありで、浴衣も貸してくれて、大きな仮眠室までついてます。超オススメ。趣きは全く無い、いわゆる「温泉ランド」だけどね。
- 温泉で温まったんで、65番三角寺に向かって出発するかな・・・。と思ったら道草食ったバチが当たりました。雨。結構本降り(泣)。天気予報では曇りって言ってたのになぁ。せっかく暖まったのに・・・。カッパを着込み気を取り直して出発。雨で滑りやすくなった県道47号を慎重に運転し、迷わず松山自動車道へ。当然でしょ。だって楽なんだもん。
- 伊予愛媛最後の札所65番三角寺はご想像通り山の中。しかも雨だよ。カッパ着てるから濡れはしないけれど、体温がみるみる奪われていくのが分かります。寒いよ〜。特に手。グローブグッチャリなんだもん。
- ようやく65番三角寺に到着。霧が立ち込める中雨が降って、寒いんだけど荘厳な感じ。他に誰もいないしね。このお寺は変わった造りになっていて、山門が鐘楼を兼ねています。伊予愛媛撃破を記念して鐘をひとつき。ゴーンという音が雨降る山に吸い込まれていきます。
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65番三角寺の山門から境内を望む。
午後4時半を回って、巡拝者は誰も居ません。 |
- 本堂、太子堂とお参りを済ませて、納経所で朱印を頂きます。さて、長かった旅もあとは讃岐香川と和歌山高野山奥の院を残すのみ。焦らず、じっくりとお参りします。
- 雨が降ってるので、今日は新長谷寺YHに宿泊します。
既に65のお寺にお参りして、いっぱしのお遍路さんになってきました。般若心経も舎利礼もスラスラと詠めるようになったし、なんかお遍路さんが板についてきた感じ。自分で云うのも変だけどさ(笑)。発心の道場、修業の道場、菩提の道場と来て、明日から始まる讃岐香川は、「涅槃(ねはん)の道場」。あの世とこの世の境の道場という意味。さて、仕上げはじっくりと行きましょうか。あまり入れ込んで出家しないようにしなきゃ(笑)。
【つづく】
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