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  お遍路へ行こう!(第11話:お礼参り篇) 

八十八箇所の巡拝を済ませたら、和歌山県の高野山奥之院にお礼参りに行くのが慣わしとの事。高野山には今でも弘法大師が住んでいるという伝説があって、巡拝中の無事のお礼を弘法大師に言いに行くという訳。

再び一番札所に
戻ってきました。
どう?いっぱしの
お遍路さんの顔
してるでしょ。

 納経帖の最後のページには「はじめのお寺にお礼参り」と書いてあるんだけど、これって良く考えたら変だよねぇ。お寺を巡るのは弘法大師の足跡を辿るのが目的なんだからさ、お礼参りするとすれば弘法大師本人にすべきだろ?でも、ま、空きページが出来るのもなんかしっくりこないんで、一応一番霊山寺に行って納経印貰いましたけどね(笑)。

 さて、お礼参り本番はなんと言っても高野山。関西のバイク乗りには有名な龍神スカイラインの入り口にあるんだよ。11月17日(土)の夜は徳島県藍住町のグリーンスポーツ施設「みどりの広場」に野宿して、18日(日)に和歌山に行く事にしました。もちろんフェリーでね。

高野山奥之院の納経所。
本堂は撮影禁止なんです。

 11月18日(日)は朝6時起床。なんと雨降ってやがんの。天気予報では降水確率10%だったのにさ。テントはびしょぬれ。横の体育館の軒下にテントを移動して乾かす羽目になりました。なんだかんだで結局出発は9:30。10:15分発の徳島→和歌山フェリーに乗り遅れそうだよ。

 なんとか滑り込みセーフで南海フェリー第5便に間に合いました。約2時間の船旅。乗船所の受付のおばちゃんに「このバイク何cc?」って聞かれたんで、冗談で「125です」と言ったら格安料金で乗船出来ちゃいました。キセルしてる気分。おばちゃん〜、あれ冗談だったんだけどなぁ。ごっつわんです(笑)。

 和歌山港に到着したらドピーカン。嬉しいな(笑)。国道24号線をネズミ捕りに注意しながら快調に飛ばします。

 高野山に続く国道480号線は、これはもう、バイク乗りにはたまらない中低速ワインディング。日曜日という事もあって、たくさんのバイクとすれ違いました。おそらく竜神スカイラインに行った帰りのライダーだろね。

 程なく高野山に到着。日曜日という事もあって、たくさんの観光客。想像はしてたけどね。お遍路さんの姿はほとんど見えません。でも例によっていつもの通り、堂々と白衣着て、堂々と読経。最初の頃の恥ずかしさなどかけらも無く、逆に「お遍路さん」である事が誇りです。我ながらスゲー心境の変化。たった2週間強の経験だったけど、変われるよ、確実に。

 納経所で朱印を頂いて、全て完了。とうとうやったぜ。納経帖が全て埋まった事も嬉しいけど、それよりもワンランク強くなった自分が嬉しい。この感動を、この心もちを忘れないようにしよう。

 納経所のお坊さんと1時間も話をする。お経の由来、作法、弘法大師の話、エトセトラ。初めて聞く話ばかりで滅茶苦茶面白い。話も上手だしね。聞くと、高野山大学で教鞭も執っているとの事。道理でね。しかし、一お遍路のおいらに1時間も話をしてくれて有難う御座いました。結局、納経所に上がり込んで、お茶とお菓子まで頂いちゃったもんね。

 長いようで短かったお遍路の旅もこれにて終了。どうも有り難う御座いました。


 単なるツーリングではない「お遍路」を体験出来た事を大変嬉しく、そして有り難く思う。

 自分は典型的な理科系人間で、今まで宗教的な行為をした事は一切無かった。いやむしろ宗教的といわれる考え方自体を否定してきたように思う。もちろん巡拝を結願した今でも、現代に弘法大師が生存しているとは思わないし、般若心経を唱え続ける事で物理的な幸福が直接的に得られるとは考えていない。

 相変わらず無宗教な私であるが、この旅で何らかの変化があった事は確実である。特に途中、今は亡き祖母の事を意識し始めてからはそれが顕著であった。持鈴を鳴らしながら涙が止まらなかった鶴林寺、最後の大窪寺で見たてんとう虫。今までの私だったら考えられなかった行動や考え方だ。

 荼毘にふした亡骸が鶴林寺に居たり、てんとう虫になったりする事など物理的にあり得まい。おそらく、てんとう虫の話なんぞは単なる偶然に過ぎないと思う。それだけ、私の心境が、より澄んでいく方向に変化した結果だと思う。

 なんという題名だったかは失念したが、星新一のショートショートに妖精だとか神様だとかを信ずる子供を狂人扱いして隔離し最終的に殺してしまうという話があった。現代の科学崇拝の傾向、言い換えれば純真な心や考え方を否定する事に対し警鐘を鳴らす寓話である。この旅を終えて、著者の伝えようとした事が、より強く理解出来る。

 御四国を巡る事は、子供の心に戻るための行為かも知れない。

 全てのページが埋まった納経帖を眺めてみる。全てのお寺の記憶がある。情景が目に浮かぶ。その時考えた事も思い出せる。

 納経帖の裏表紙に次のように書いてみた。今日のこの気持ちを忘れない為に。もし忘れてしまっても思い出せるように。

平成十三年十一月一日より愛機ZRX1100号を駆り一番札所を出発。弘法大師の分、自らの分、そして亡き祖母 故杉山こうの分の計三本の線香を立てつつ御四国を巡礼す。平成十三年十一月十七日に八十八番札所にて結願。平成十三年十一月十八日に高野山奥之院にお礼参りをす。

平成十三年十一月十八日 和歌山高野山ユースホステルにて

 この旅は様々な人の助けを借りて、初めて為し得たものであった。旅に出るから会社を辞めるという私のわがままを聞いてくれた会社の諸君、旅に出ると聞いて壮行してくれた友人たち、様々なアドバイスをくれたお遍路さんたち、親切にしてくれた地元の方々、BBSに書き込みをしてくれた人たち、ためになるお話を頂いたお坊さんがた、宿泊場所を提供して下さった人々、実に計57通もの応援メールを送って下さった三十余名の皆さん、本当に有難う御座いました。そういった人たちの助けを借りて、無事結願を果たす事が出来ました事を、心より御礼申し上げます。Copyright (C) by Yas / YAS Zone

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